サービス精神

フィンランドの国家としての力、又住みやすさということではこのところ世界のトップの評価を得ているようだ。私はまだたった3年目のおつきあい、知ったかぶりはやめよう。「おや」と思った経験を書いてみる。

 あるピアノのソリストがアメリカからやってきた。彼はロシア人、現在はアメリカで教授の席も持ち、又演奏活動をしている。来日もしている。名は知られている。フィンランド放送響との共演、丁度リハーサルを見せていただいていた。練習時に譜めくりを依頼され、そのお礼ということで昼食をご一緒したときの話。彼が怒っている。「誰も空港に来なかった」「誰も宿泊の場所に迎えに来ない」―そうなのである。これはヘルシンキでの話であるが、ラハティでも同様、送迎のサービスはほとんど見られない。どんなマエストロが来ようと同じだった。場所と時間だけを伝えて、あとはご自分でどうぞ!という事務局の姿勢を1年見ていた。タクシーが必要であればそれを申し出て、呼んで貰う。足代も後で精算。しかしそれ以上のもてなしはない。あるマエストロが(こちらもロシアからの客演だった)朝 事務局長に少々皮肉とも取れる発言をしていた。「このホールへどのくらい時間がかかるかわからなかったから 歩き始めて途中でタクシーに乗りました」

  音楽監督ヴァンスカ氏も夏はバイクで、それ以外は自分の車で通勤。リハーサル開始5分前くらいに駆けつける。フィンランド国内、他の都市でのコンサートの時も自力で駆けつける。

 日常でも感じることだが、余計なサービスはない国である。困ったことがあれば手の空く人はいつでも助けてくれる。良く見られる光景、バスや電車の乗降で大荷物や乳母車を持つ人を回りの人全員でサポートする。とても自然に皆が動く。「Kiitos,Kiitos」と言葉が交わされておしまい。さっと離れてゆく。親切な人達である。でも自分でできることは自分で!余計なサービスはプライドが傷つくのである。時として。自立していることを誇りとする民族。貴族社会ではなかった国、平等を尊ぶ国。爽やかである。

2002年9月21日

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