「のだめ」終わる

「すべての音が交響曲なんだ!」って思って街を歩くと楽しいぜ(笑)!by 竹中直人さん

 ミルヒーなる指揮者を演じた竹中さんが番組のインタビューで語っていらっしゃいました。そのとおり!と叫びたいです。

 音楽家が語ってもそれがみなさんの耳に届くチャンスは残念ながら多くはないのですが、こうして音楽家を演じた役者の皆さんが今回「のだめ」を通してたくさんの素敵な言葉を残していらっしゃると思いました。

 あらためて指揮者という仕事に対して注目が集まっているようですね。何をしているのか、何をしなくてはいけないのか・・・「のだめ」で描かれているのはあくまである一面だと思いますが、でもとても丁寧に作っている番組だと思いました。

 ギャグの中に本質が見えることは多々あります。まさにその典型ではないかと思います。あちこちで言われていますが、音楽家を演じた役者の皆さん、実に見事に演奏シーンをこなしています。これまでのクラシック音楽番組には見られなかった凄さです。楽器演奏にも、指揮にもある種の「重心」が決まっていないといわゆる「様に見える」ようにならないのですが、それが非常によく演じられています。だから「それらしく」見えていると思います。手先だけの演技ではないですね。

 指揮指導をなさっていた人を知っていますが、千秋君の指揮はやはり・・似ていますね。最後の7番の指揮は、なかなか・・。短期間で伝授なさった指導も見事、こなした役者も見事!番組の録画をしておいたので、ようやくすべての回を見終わりました。最後は見ているほうも熱いものがこみ上げました。楽器を回すのも持ち上げて弾くヴァイオリンも実際はあの楽譜の部分では無理だとは思いますが・・・・その辺は効果ということで。

 才能にはいろいろな種類があります。音楽的な才能があってもそれを花開かせる性格が必要です。一人では形にならない仕事です。人を巻き込む力も必要。運も必要。運を捕まえる力も必要。でもやっぱり何より必要なのは、天賦の才と音楽への情熱。これに尽きます。どちらかが欠けても本物にはなれない。

 若い音楽家を教える現場にいると、その様々な才能の種類を目の当たりにします。アマチュア音楽家の世界の中でも優秀な人は山ほどいます。みんないろいろな形で音楽に接して音楽を楽しみ、その楽しみを世の中に還元していこうと活動をしています。その結果・・・ということではなくて、そういう精神活動が豊かに行われるということが大事なのだと思います。文化というのは、そういうものでしょう。目に見える何かを探していては大事なことを置き忘れてきてしまう。「のだめ」最終回で音大の先生方が語っていました。大学時代に学生に対して何かをできたかできなかったか・・は、10年後20年後にわかること・・・そうなんです。教育もすぐに結果がでるわけではない。だから良いと信じること、十分に考えてなされた教育を丁寧に継続することが大事です。

 玉木宏さんも上野樹里さんもNHKの朝ドラ時代から魅力的でしたが、今回も十分に役者の仕事を見せていただきました。ありがとう!といいたいです。

 そして自分は「のだめ」を超える現実のクラシック音楽の素晴らしさを紡いでいきたいと強く思います。オーケストラの素晴らしさと厳しさ・・・作曲家が残してくれた人類の宝である作品たち・・・。指揮者としてその二つの世界の間にたってしっかり役割を果たしたいと思います。そして現実はドラマよりも・・・・です。今年もあと二日!

2006年12月29日
 

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