それは西新宿の片隅。とある会議室。話も終盤に向かっていく頃16時35分。揺れました。半開きの窓は細かく揺れ始め不気味な音。そして足元からの大地のうねり。一度収まったあとぶり返した揺れのほうが小さいのに恐ろしく感じた昨日の地震。
ほどなくして新宿の街を走り回る救急車の音・・・「被害が?」
地震発生から40分ほどして会議も解散。私は文京区への移動劇。
17時30分頃到着した西新宿駅では地下鉄はもちろんストップ。案内も復旧のめどは不明とのこと・・
あきらめて地上へ。タクシーはすべて実車。バスも満員で乗れずに停留場を素通り。大通りはすぐに車で一杯に。
今度は新宿駅まで歩く。JR構内は多くの人が塊を作っていた。17時45分頃構内に入ったが、西口中央改札では駅員はわずかな人数で乗客の質問に対応。構内アナウンスもその時点では「すべてストップ・現在点検中」を繰り返す。いずれ動くであろうと山の手線ホームへ上がる。思ったより混雑はない。停車中の車内に入り案内を待つ。18時すぎ「JRは埼京線と中央線西行きと新幹線だけ運転再開」とのこと。とりあえず東京の東側へ移動したかったので埼京線を頼って構内を移動。
埼京線のホーム下通路は人人人。新宿駅埼京線は1・2・3・4番線を使用している。案内は「大宮方面は動いています。渋谷方面は当面動きません」表示板の案内を見て3.4番線へ移動。「大宮方面は当分1・2番線から発車します。3・4番線には来ません」再び移動。通路の中での移動でも昨日の人の数では大変な騒ぎとなってしまう。1.2番線ホーム階段下にはいろいろな想いの乗客が静に待っている。本当に静だったと思う。そこへ突然の奇声。「××××~~~××」正直のところ何を言っているのか不明だった。不安だったのだろうか、うんざりだったのか、暑すぎたのだろうか・・・。でもそこから怒りの声の連鎖がなかったのが凄いと思った。
ゆっくりだったが少しずつホームへ上がる。お互い気をつけながら・・ホームへ到着した車内から出てくる乗客が降りてくる隙間を何とか確保しながら、ゆっくりと塊が移動。そこへ駅員の声「今のうちにホームへ挙がってください。まもなく階段規制をかけます。ホームが空きました。今のうちです・・」これはちょっと危険な号令ではないかな、と思いながら、階段の塊はスピードを少しだけ上げてホームへ動く。
ホーム地上階で金魚の気持ちになった。「息が吸える」そうしてたどり着いたホームではまたひと悶着。日々の満員電車の上をゆく乗車率。絶対にドアが閉まらない状態の乗客の乗り方。そのためにどんどん遅れる出発。「降りろよ~」「ドア閉まらないぜ」さすがに怒号が飛び交う。ホームでは中学生が大きなカバンを椅子にして4人ほど座り込んでいた。若いお姉さんが厳しく「ちょっと~立ってくれない?」しぶっているから、オバサンの私が「君たち、そこどきなさい」と小言ばあさんに変身。お姉さん格好よかった!
やっとこさ到着した1・2番線へ無情の案内放送。「このあと大宮方面へは3本続けて3・4番線から発車します」
どか~ん。なんなんだ・・・振り回されるのは嫌いなのでこのまま待とうかと思ったが、4本目は何時になるかわからない状況だったので、移動開始。3.4番線にはすでに満員の列車が二本停まっている。先ほどと同じ状況。降車客がいるのに乗り込むアホな乗客のためにまた騒動。「降りる人いるのに、何で乗るんだよ!」叫んで降りてきたのは若いお姉さん。日常の列車の乗降にも見られる風景だけど殺人的混雑の中では命取りになる。本当に危険だし、ちょっと考えれば、広く出入り口開けて待っていたほうがスムーズに行くのに・・・「押すな、まだ降りてるよ」と後ろに叫んでも白い顔で推し続ける人の塊。
すったもんだで乗り込んだ列車。もちろんすしずめ、いや圧縮したゴミなみのつぶれ方。腰に響く(泣)案の定ドア付近で信じがたい乗り方を試みる乗客。若いお姉さんの集団。「大丈夫!乗れるよ!人はいくらでも小さくなるんだ!頑張れ!」といって友達を乗せようと頑張る。そこへおじさん「いいかげんにしろよ、無理だよ!」と叫ぶ。あきらめた半分がホームへ残る。しまる扉。「どうしよう・・・・連絡つけられないよ・・気弱な二人を残してきちゃった・・大丈夫かな・・」ううむ、降りなかったのか・・・どんな友達なんだろう。
池袋まで無言の塊が動く。そして5分後到着。気抜けするような状態の池袋。人がいない。あっさりと乗り降りを済ませて。先の十条まで行きバスで王子へ。そしてようやくタクシーに出会えて目的地へ・・・3時間の移動劇。そして人間劇。先方は待ち合わせ先で暖かく待って下さっていた。本当に申し訳ない・・・
今回のような時、携帯電話の力は偉大だと感じる。でも被害が大きかったらこれは頼れなくなるだろう。危険なときは覚悟を決めて移動は断念したほうがよさそうだと思った。そして今日の紙面でも書かれていたが、思ったよりも復旧に時間がかかっていたらしいこと。人の多い公共機関での対応策の準備があまりできていないのではと感じたこと。日本人はおとなしい民族であるのは確かだと思ったこと。秩序を求めて気を配りあい我慢することは得意だと思ったこと。しかし、ひとたび動き出すと社会性がなくなるのでは・・と思ったこと。声をかけてリードする大人が少ないと感じたこと。若い女性がはっきりとモノを言い、しきる能力があるということ。上に書いていないことも実はたくさんあって、このようなことを昨日の3時間で感じた。長い一日だった。
人とモノと建物と車と電車がひしめいている化け物の東京。思ったよりも危険だと思う。人様の文化にクレームをつけている暇があったら、東京のリーダーさんは、足元をもう一度点検したほうが良いのではとも思った。あの状況では弱者は潰されてしまいます。何かある・・・という予兆はもう十分にあったわけで具体的な対策が急務でしょう。でもきっと関係機関は昨日の騒ぎで対策を練っていることと思うけど・・・そう願いたいけど・・・・
そして自分自身も備えと心構えを!今週末旅立ちます。世界中安全な場所はなくなりました。でも元気に行ってまいります。また8月に関西でお目にかかります。
2005年7月24日