酷暑に

8月8日にフィンランドから戻った。オウルンサロ音楽祭の様子は別の項目でまとめてみたいと思う。YLEテレビの取材、KALEVA誌への掲載などで別の地域に住むフィンランドの友人からも連絡を頂いたり・・という嬉しいこともあった。音楽祭そのものの規模は小さなものだが、暖かな空気と演奏家の情熱が飛び交った充実の日々だった。この機会をいただけたことに深く感謝している。

 帰国してみると、日本の政治がまた大変なことになっている。旧体制を壊すという意図は賛成であるが、郵政民営化には疑問も残っている自分としては今後をしっかりとにらんでいきたいと思う。民営化によって利益優先になった際に、どのような事態になるか・・そこが最も心配のポイントである。「反対」を唱えた議員の皆さんは、喜んで党を離党なさったほうが良いと私は思っている。従来の選挙活動に見切りをつけて新しい視点で国民に訴えてみれば良い。今のようにしがみつくとせっかくの政治理念さえもぼやけてしまう。刺客を送り込む「党」を国民が選ぶか否か、リーダーの考え方に賛成か反対か・・そういう本当の国民の意思を反映する良い機会となるかもしれない。あまりにも他力本願、人任せの日本の政治にとっては、良い転換期になるだろう。

 政策や意見の内容で政治活動のグループを再編するということに、私は賛成だ。本来そうあるべきで、変な仲間意識や馴れ合いはもうこの国には必要ないと思う。「お願いします」のスタイルの選挙運動ももう終わりにしてはいかがでしょうか。そのかわり、本当に国民は自分たちで事を行う意識を持たなくてはいけない。本当の民主主義の出発かもしれない。もし、そこまで小泉首相が考えているのなら、彼に賛成しよう。現時点ではそれは怪しいと感じているので、票を入れるつもりはない。

 汚職や裏金、献金等がまかり通っているのは、既得権やお上に任せておけば・・・という日本に古くから根付いている風習のためだろう。これを一掃するのは並大抵ではない。また一掃したからといって、必ず良いことになるとは限らない。何かを選択するときに、判断する人の目がきちんとしているかどうか・・・これがとても大事なことであり、その判断基準はどうしても見識を持った人、経験のあるひとという立場が求められる。そうなると、その判断する人に良い印象を持ってもらうために様々なことが画策される・・・という流れになるのだろう。政治音痴の自分にもその辺は理解ができる。でもひとたびそこに、国民が高い意識を持って介入する意思を持てば、また違ったものになるだろう。実際に決断する人はその道のプロであったとしても、その人を選ぶ際に余計な利害関係なしの状態で選ぶという、選挙の基本を今度こそきちんと行うこと・・・あまりに単純かもしれないが、結局はそこに尽きるように思う。

 ただ怖いのは、国民相手に今度はつまらないパフォーマンスが始まること。人気取りだけの空虚な情報が流れること。日本人はその辺が弱いと思う。だまされないこと。我々も勉強しなくてはいけないのだ・・・結局は・・。その辺フィンランドの皆さんはなかなか厳しい。世界一汚職が少ない国としても知られているが、そのために国民が声をあげる、不正を許さないという風潮は日常でも肌で感じる。皆さん新聞も良く読んで勉強しているし、何よりメディアの報道が非常に真剣でまじめで、堅物である。その反面面白い政治漫画の番組も作成されていて、上手にバランスをとって生き抜きとなっている。このユーモアは面白い。歴史の長い国は、「どろどろ」が当たり前だが、少しこの新しい国の「さわやかさ」も真似してみると良いかもしれない。

いろいろな分野でプロが本当に働いていない、というのが今の日本。専門家でなくても何となく意見が言えてしまったり、判断をしてしまったり、決定をしてしまったりもするとても怖い国だと感じている。そしてちゃんと意見交換ができない国でもある。今朝も某番組で政治家とテレビに良く登場する評論家が「討論」をしていたが、正直子供のけんかよりも性質が悪いと思った。人の話を全く聞いていない。くだらないパッションで押し捲りあたかも強い意見を持っているかのようなパフォーマンスでの応酬。まともなディベートなら今の10代の子供たちのほうが上手なのではないだろうか。フィンランドは実にきちんと人の話をきく。子供の頃からそのようにしつけられている。その上できちんと反論する。会議や会合の席はとても静かだ。

 そんなフィンランドは8月はじめですでに16度くらいまで気温が下がっていた。日中は20度を越して陽射しも強く暑く感じるが、夜は冷え込み秋の色が濃い。夜中でも薄く陽差しは残っているので自転車で走り回っていた。手は凍えてしまう。それでも何となく懐かしく暖かな空気に浸っていた9日間であった。

 日本の暑い日々とあと2週間のおつきあい。まずは大阪に、その後は学生たちとの音楽の日々。そしてまた涼しい土地に月末から戻る。申し訳ないような気持ちだが、旅行ではないのでこちらも必死である。心は熱い。

2005年8月14日
 

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