9月6日より3日間、オーケストラで演奏されるシベリウス音楽祭開催されました。最終日の9日は室内楽です。
2000年9月の第1回目から皆勤賞で拝聴しています。リハーサルから拝見して、楽譜や資料の勉強もさせて頂いてきました。今年でオスモさんの指揮による音楽祭は終了です。来年からは、新しくラハティのポストにつく、ユッカ・ペッカ・サラステさんの登場です。タイプの異なる指揮者ですが、こちらもフィンランド!を十分に感じさせてくださる、名指揮者です。研修の時期に何度かお目にかかっています。
音楽祭初日のクッレルヴォ公演は、本当に見事な演奏でした。今年はインターネット配信も始り、ラハティ響のサイトのトップに掲載されているクラシックライブwww.classiclive.comという会社により早速提供されています。契約をすると、期間限定でこの音楽祭の様子を見ることができます。
二日目はヒュンニネン氏のバリトンによる、オーケストラ伴奏の歌曲と、スカラムーシュというパントマイムが入る音楽を、オーケストラのみで演奏。プログラム的には非常に渋く地味なものです。スカラムーシュは1時間かかる作品で、その間さまざまな場面が音で描かれます。お客様にどのくらいそのドラマが伝わるのか、1時間忍耐となってしまうのか、マエストロも案じていました。しかし、結果・・・本番とても演奏も集中度が高く、またお客さんの集中力もあって、とても素敵な音楽の時間が生まれました。
そして三日目。非常に難しい「夜の騎行と日の出」から始まり、交響曲第4番そして第5番という、充実のプログラム。オスモさんの音楽祭最後が第5番というのは、何かとても意味があるように感じます。そしておそらく誰よりもこの作品を深く理解しているのではと思う、第4番。本日もオーケストラと一緒に、永遠の時間を生みだしました。
アンコールは、「伯爵夫人の肖像画」「賛美歌」そして「フィンランディア」もちろんスタンディングオベーションでした。フィンランディアの演奏スタイルも、この8年の間にずいぶん変化しています。特に最近はその変化の度合いが激しいかもしれません。
今年気がついたので、新しいもののようです。ホールのロビーにあった、オスモさんの顔。残念ながら似ている・・・とは言えないものですが・・・。
本日はプレトークで、オスモさんのインタビューがありました。BISの全集発売記念のセレモニーも別の日にあったようで、関係者も一緒に壇上に。BISの社長、レコーディングディレクター、そしてこの音楽祭のプログラムプランナーでもあった、アンドリュー・バーネット氏。この皆さんによるトークでした。バーネット氏はシベリウスの新しい本を完成させたところです。バーネット氏には、今年日本のシベリウス協会も大変にお世話になっています。
終演後はステージ裏の狭いスペースですが、楽員とオスモさんで8回の音楽祭の一区切りの意味もあるのでしょうか、Kippis(乾杯)の時間がありました。
毎年シベリウスの新たな研究の発表もありますが、それを実演で逸早く拝聴できるのが、この音楽祭。そして何より丁寧なリハーサルと、指揮者とオーケストラにより長い時間をかけて積み上げた、このオーケストラ独特のシベリウスの言葉、響き。それを2000年に完成したこのシベリウスホールで現実のものとしてお客様に届ける、その貴重な瞬間に8回立ち会えたことは本当にうれしく思います。
今回も、12月の自分で手掛ける「クッレルヴォ」公演のために、版の違う楽譜をはさんでディスカッションの時間をいただきました。現在新たに出ている全集の前に、ブライトコプフ社でレンタルで入手できるもの、それと別に様々な研究者による楽譜が存在しています。ラハティ響はそのうちの一つを使用しているため、いくつか違いがあります。
音楽祭初日の素晴らしいクッレルヴォのあとのマエストロと。ちょっと面白いショットになったので・・・
本日最終日の休憩時間。こちらは、英国のシベリウス協会会長、エドワード・クラーク氏。この音楽祭では何度もお目にかかっています。4番と5番のスコアをはさんで少しの時間お話を。4番の難しさ、そしてかけがえのない作品であることを、お互い確認した会話となりました。
今年は初日と三日目はほぼ満席でした。海外からのお客様も前年より増えていたと思います。特に今年は英国と日本からのお客様も多く感じました。
まもなく私も帰国です。今年の猛暑の日本から脱出した形となった夏。仕事と勉強、そしてフィンランドの空気の中から秋の企画に向かって、何かを掴んでいることを自分でも祈るばかりです。演奏家は自分の手で音を出さない限り、何も語れません。何もやっていないと同じ事です。指揮者の場合、オーケストラという素晴らしい楽器から、きちんと音を紡ぎだすこと、作品の命を現実に見えるものとすること・・・・それが使命であり喜びです。
8年間この音楽祭を拝聴してきて、ホールと一緒に育ってきたこの音楽祭、そしてオーケストラ、そしてマエストロヴァンスカ氏・・・その姿をじっくりと拝見できました。その自分が体験してきた時間から、自分自身の道と言葉を作り上げていく決意をまたあらたにしたところです。
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