匠の心


 先日同僚の先生が素晴らしい本を紹介してくださいました。

宮大工が語る本2冊。西岡常一さん、そしてその弟子である小川三夫さんのお話を塩野米松さんが聞き書きをなさっています。

札幌で泥まみれ雪まみれで育った自分、そして今Suomiと接することで幼い頃の日本が持っていた豊かさを思い出している自分にとって、本当に一字一句心に残る本です。2001年発行となっているので、きっと多くの皆さんに読まれている本であることと思います。

その中のいくつかを・・

<宮大工棟梁の自然観>

  木は生育の方位のままに使え・・
堂塔の木組みは木の癖で組め・・
いずれも木の使い方の心構えをといたものですな。要は自然の教えるままにしなさいと言うているわけです~~大工にも自然観が必要なんです。自分より大きな自然というものに対してきちんとした考えを持たなあかんですよ~~たった一本の木でも、それがどんなふうにして種が播かれ、時期が来て仲間と競争して大きくなった、そこはどんな山やったんやろ、風は強かったやろか、お日さんはどっちから当たったんやろ、私ならそんなことを考えますもんな。

教育の現場には絶対に必要な精神ですね。人間もいろいろな環境や素質でみんなが違うもの。それを見抜いて伸ばしていくのが本当の教育だと思います。だから先生はとっても大変で素晴らしい仕事だと思う。
そして音楽の細胞、楽譜の中の音符という言葉ひとつひとつも、みんな違う。それを実際の空間に組み立てていく音楽家という仕事は、匠の心に共感する部分は多いと思います。

<経験という学問>

  ・・・・・学者があって建造物があるのやなくて、建造物があって初めて学問がありますのや~~コンクリートや鉄やったら実験して強さや耐用年数が計算できるかもしれませんが、木はそうはいきませんのや。現代建築にしてもそうでっせ。何でもかんでも計算どおりにいくと思うとる~~~~しかし木は生きているんです。計算どおりにはいかんのですわ。一本一本木の性質は違いますわ~~~ですから私らだって完璧ということはないんです。じゃあどうするのかといいましたら、精一杯のことをするしかないですな。自分ができる仕事を精一杯する。これだけですわ。

おっしゃるとおりであります。音楽も計算できない物事です。音楽家のあり方もマニュアルどおりになんていきません。音楽家は人間です。マシンではない。だから時間をかけてリハーサルを積んで最終的に納得のいくものをお客様に届ける・・・そういう環境が大事なのです。

オーケストラなんて数十名の音楽家が一つの音楽という建築物を建てるのです。手間隙かかるんです。経済効率は悪いのは宿命です。その部分を今音楽家はみんな努力しています。

この2冊の本は一字一句大切にしていきたいと思うことが満載でした。

本日は自宅での勉強デーでありますが、外はちょっとにぎやか。春休みなんですね。子供たちの声が楽しげです。若いエネルギーが弾けているのは素晴らしいこと!みんな遊べ!転べ!すりむけ!戦え!笑え!そうして相手を知っていく。たくましい子供が増えてほしいと思う。春の空気にそんなことを思いました。空気の音がいつもとちょっと違います。

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