朝10時35分発のコーチ(長距離バス)で一路カーディフへ。バスに乗り込む時に又つかまった。インターネットで予約ができるe-チケットというもので往復の予約を取ってある。すでに料金の支払いなども確認できているもので印刷したものをドライバーに見せれば良いということになっていたが・・・一目みて
「駄目だよ!(そんなはずはない)-これはちゃんと予約していますよ」
「いや、これは違うバスだよ-え?(いや、正しいぞ)ここを見てください。このバスの番号ですよ」「あれ?あ、間違えた。帰りのところを見ていたね。失礼!」どうしても私をカーディフに行かせたくない人がいるのだろうか・・・。
バスは7割くらいの乗車率。途中車掌さんがバスの中を行ったり来たりするので何をやっているのかと思ったら、乗客に注文をきいて、バスの後ろにある棚から食料や飲み物を持ってきていた。籠などに入れて注文を受ければ早いのにな・・と思いながら「コーラとサンドイッチください」と注文した。濃厚なミックスチーズのサンドイッチを平らげたら 素晴らしい風景の中にいつの間にかいた。羊達ののんびりした姿や綺麗な緑に馬が佇む英国の田園風景そのものの中を走っている。
シャーロックホームズに始まり、ビートルズを通過して、クローニンを知り、英国音楽を辿った中での憧れの風景である。もうすでに春がきているような気候であった。フィンランドはまだ真っ白な世界で、出発の時も道は凍り付いていた。ヒースローであまりの暑さにジャケットは脱いでしまったが気温は10度以上違うようだ。英国は左側通行であったことにしばらくして気が付いた。フィンランドの車は右側通行である。
時差2時間というのは、なんとなく嫌な時間差である。もちろん朝5時にでるために3時に起きたことが原因なのだがとにかく眠い。残念ながら憧れの田園風景も半分くらいで幕を閉じてしまって暗闇へと入った。ヒースロー空港から3時間15分ほど、カーディフに到着。噂にきくカーディフ城を過ぎて中央バスセンターで降りる。雨である。
列車の駅もすぐ近くで地図ではホテルも歩ける距離に見えたが、雨の中諦めてタクシーにした。親切なフィリピンからの移住者の運転手だった。「もう40年ここにいるよ」ということだ。ホテルは近代的なシンプルなホテル。もちろん価格も手ごろ。英国のホテルは高い。探すのに苦労する。荷物を片付けて陽のあるうちに市内の様子を調べておこうと外に出た。早速カーディフ城へ。思ったより近くて、見学コースの時間にも間に合ったのでツアーに参加。日本人の学生さんと英国人、フランス人という4人のツアーとなった。
カーディフ城は13世紀に作られている。しかしその後歴史の中で一度廃墟になり、現在見られるものは19世紀中に復元したものだそうだ。復元したビュート家はカーディフの波止場を所有していたため、交易でかなりの冨を得ていたらしい。城の中の装飾は様々な文化を取り入れて、贅沢な材質を各部屋ごとにテーマを持って使ってあった。子供達のために世界の物語を壁に様々な形で描いてあるものには、とても暖かさを感じた。カーディフの街もそうだが、いろいろな時代の建造物の特徴がそのまま残されていて、見方によっては雑多な印象も持つが、とても面白いところだと感じた。
ケルト人を祖先とするウェールズの文化だが、このケルト民族の神話が又面白い。フィンランドと同様自然神を信じる民族、しかし神話にはどちらかと言えば北方ゲルマン-北欧神話に通じるものが多く見られる。国を作ることはなかったケルト人だが、ヨーロッパ全体の祖先であるともいえよう。
英国といえば、ブラスであるが、金管バンドの名作が多いフィリップ スパーク氏の作品に「ドラゴンの年」という作品がある。私も昨年手がけたが、このドラゴン、実はウェールズにいる赤いドラゴンである。中世以降勇者の印として、レッドドラゴンがウェールズの旗に描かれている。その旗がカーディフ城の一番高い塔に翻っていた。
2003年3月4日