ラハティ響音楽監督のオスモ ヴァンスカ氏は今年50歳を迎えた。今月28日が誕生日。
フィンランドの風習で50歳の誕生日は盛大に行う。祝ってもらう本人がお客様を招いてご馳走などを振舞う。2年前私も友人の知人のパーティに同席させていただいた。(演奏に駆り出されたのだが・・)親戚一同、友人知人数十名を集めての盛大なものだった。
今日のリハーサル休憩の際にヴァンスカ氏からオーケストラと事務局へ、ということでホール内カフェでそのセレモニーがあった(お相伴させていただいたが)。オーケストラ側からはプレゼント贈呈がある。ヴァンスカ氏はコーヒーとケーキを振舞う。このケーキが数十センチ四方の大きなものである。これをめいめいに取り分けていく。特に男性は山盛りに。(甘いものが大好きなフィンランド人男性である)2年前私の研修の最後にも同じセレモニーを行った。オーケストラと事務局からプレゼントとスピーチを頂く。こちらもケーキ、コーヒーの振る舞いとスピーチのお返し。これがいたく緊張するものである。今日もオーケストラからのお祝いは、事務局長トゥオマス キンベルク氏とホルン首席奏者ペルッティ クーシ氏から。そしてヴァンスカ氏がお礼を述べる。非常に厳粛に静かにお互いのスピーチを聞く。これはこの国の素晴らしい姿勢だと思う。誰かが発言していることに、しっかりと耳を傾ける。私語や物音など立てると誰とも無く「しっ!」となる。
楽員が50歳を迎えても同じようにこのセレモニーはある。60歳も大事なお祝い。反対にそれ以前はそれほど大きなお祝いはないようだ。人生の時間を比較的短く意識しているフィンランド人ならではであろうか。これに関して面白かった会話が昨年の秋にあった。
アンサンブルイリスのコンサートマスター ペトリ カスケラ氏との会話の中で彼自身の人生設計に関する話題になった。「自分の人生はもうディミニエンド!」「ええ?私と同い年だよ」「フィンランド人は日本人のように良いものを食べていないんだ」「・・・・・・」ディミニエンドという言葉を出した時点でカスケラ氏自身大笑い。人に聞くところによると、概ねそのような人生観を持っている人がフィンランドでは多いそうだ。福祉国家で生活の保障はされている国家ならではであろうが、気質として自然とともに歩んできた北の民である。無理をしない、流れに逆らわない、自然体、という姿勢が染み付いているのではないだろうか。
50歳を迎えたヴァンスカ氏はその意味ではあまりフィンランド人らしくないかもしれない。忙しく飛び回ることが大好きである。夏の休暇もあまり取らない。まだまだ活発なクレッシェンド指揮者であるようだ。
明日のコンサートは「Juhlakonsertti Osmo Va”nska” 50vuotta」と銘々されている。クラリネットの師匠(ヴァンスカ氏はもともとヘルシンキフィルのクラリネット奏者だった)カール ライスター氏をソリストに迎えたMozartの協奏曲も含むプログラム。シベリウスの交響曲第一番もいつもながらの快速さに一段と音色の輝かしさを増して素晴らしく仕上がってきている。そしてヴァンスカ氏の自作のお披露目。Onnea! Hyva”a” syntyma”pa”iva”a”!(おめでとう誕生日)
2003年2月26日