指揮法講習会を終えて その3

さて最後の課題、変拍子である。2日目の午後、モデルバンドも代わり課題曲はコープランド作曲「エル サロン メヒコ」。これも実は昔録音をしているのだが、吹奏楽アレンジとオーケストラ原曲の拍子の書き方が一部異なるという大問題がある作品である。そのことは前のエッセイ変拍子にも繋がる大事なことを含んでいる。作曲者の扱う変拍子への解釈である。単なる拍子の変化だけではなくて、その中にある音の言葉のアクセントをどう表現しているか、それをどのように楽譜に表したか、ということである。
正直のところ、原曲の拍子の書き方の方が指揮はしやすい。又音楽全体の流れも良いと感じる。この問題はどの先生もご存知だったようで、あらためてコープランドの吹奏楽の世界への浸透性を感じた。

 話は脱線するが 実際コープランドの作品は吹奏楽アレンジを行っても原曲の色合いをあまり損なわないものが多い。その意味でも東京佼成ウィンドオーケストラとの録音ではCD2枚分コープランド作品を取上げた。何より私自身が当時夢中になっていた作曲者であったのだが。録音に際して新アレンジも委嘱した。「劇場のための音楽」これを私の和声・ソルフェージュの先生でもある伊藤康英氏に委嘱した。この作品は思い出があり、ブザンソンのコンクールでの課題曲でもあった。この話はまた後日・・・・

 変拍子をどう練習するか、一つの例は先日のエッセイで書いてみた。この講習会では参加型レッスンを行ってみた。受講の先生方皆さんにオーケストラを担当していただき、とにかくリズムを覚えてしまうのである。口三味線、又打楽器と一緒にリズムの合いの手を手拍子で。このようなことをしながら、目で楽譜をみるよりも体で覚えてしまう事、変拍子は覚えないとなかなか滑らかには指揮できない。そんな講習となった。エル サロン メヒコの中に含まれているいろいろな歌も面白い。酒場でどんな賑わいだったのだろう、と思い巡らせながら 先生方には思い切り酔っ払いの手拍子をしていただいた。

 二つのモデルバンドの皆さん本当にありがとうございました。そして毎回新しい視点でたくさんの質問をして下さる先生方にも大感謝。私の拙い脳味噌もフル回転でよい刺激を受けた。音楽の世界も指揮の世界も限りなく奥が深い。探索への旅には演奏という現場だけではなく、このような機会、又大学での授業なども含めていろいろな方法で出かけられる。楽しみが多くて時間が不足かもしれない。人生限られた時間。上手に使ってたくさんの旅をしてみたい。

2003年1月29日

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