2002年も静かに終わろうとしている。皆さんはどんな時の過ごし方をなさっているだろう。
音楽界も世界的に賑やかな年であったかもしれない。日本人の海外での活動も華やかになり 又充実してきている。その実績で日本へ里帰り公演で素晴らしい公演を見せてくれる人も増えている。大きな話題にはならないが、海外でポストをもつ人も実はたくさんいる。土地の聴衆に愛され 大事に音楽文化を生み出していっている人の活動を知らせて頂き、やりとりする中で 本当に大事なことは何なのかと自問自答することも多かった。
今年初春と晩夏にフィンランドに行き 室内楽や室内オケの活動でフィンランド人と接する中でも 音楽家としての生き方に多くの刺激を得ると同時に意識の差なども感じた。日本は忙しすぎるな、というのが正直な感想である。社会の仕組みがそうであるので それを嘆くばかりでは仕方がない。音楽家としては変革を行いたいと切に思うわけである。
時間芸術でもある音楽は 人の歩む時間、社会の時間などに様々な影響を受けている文化だと思う。だから余計に私は時の刻み方を大事にしたい。そして北欧に接し始めてから特に 宇宙船地球号という意識を強くもっている。その中でつい先日、まさにそのタイトルを持つ本に出会った。「北欧スタイル快適エコ生活のすすめ―高見幸子・鏑木孝昭著」84ページに<宇宙船地球号>なる見出しがあった。20世紀後半から様々な国が声を挙げ何とかしようと活動を行っているが 未だに世界挙げての大きな動きにはならない。それを妨げているものが何なのかということもこの本には書かれている。大国の理論、利害に関して一音楽家の自分ができることは限られるかもしれないが、しかしこのまま行けば芸術環境さえも破壊される危険もあると感じる。決して無視できないことだと思う。上記の本はスウェーデンの例を取上げているが、フィンランドしかり、北欧は全般に渡り同じような意識をもっている。この面でもまさに先進国である。世界のリーダーとなりうる政策を実行している。(蛇足であるが、スウェーデンでのノーベル賞授与式では日本のマスコミがお叱りを受けたそうだ。さもありなん・・・)
2003年は国内はもちろん、世界的にも益々大きな問題を抱えたままでのスタートとなりそうだ。20世紀の精算を本当の意味でしなくてはいけないのだろう。他者を謙虚な心で認め 本当の平和を築き維持する動きを 力を持つ国は進んでやらねばいけないと思う。
私個人としても己の課題を克服しつつ、今山積みの企画を具体化していくこと。小さな活動の積み重ねではあるが、豊かな流れに繋がる一歩を踏み出したい。若い頃の時間の過ごし方とは明らかに違ってきていると感じるこのごろ、時代の表面的な流れやスピードに惑わされず大事に日々を過ごしたい。一つの音楽が皆さんの心に何か光となって輝きつづけるような そんな演奏を目指したいと思う。
どうぞ良い年をお迎えください。1年間暖かな励まし、厳しいお言葉ありがとうございました。
2002年12月31日