不思議国家日本 「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」

2004年もあと9日を残すのみ。

 薬害を「大騒ぎになるから公表しなかった」という厚生労働省の発表があった。その結果莫大(ばくだい)な補償の責任が生じるであろう。同じ理屈で「パニックになるから内緒で法案を通した」と言って日本国家を根本から変える事態が起こりそうな今の日本。「怒られそうだから少しずつ増税する」といつのまにか用途不明の税金が吸い取られる。自分たちに還元されるのであれば喜んで払うのに。大人のずるい知恵で子供を言い含めているような政治だ。

 「文句が来るのがいやだから、先に謝る」。鉄道各社が時々理由のわからないお詫(わ)びを入れる。「人身事故のため…深くお詫びいたします」。鉄道各社は迷惑をかけられたほうなのに。情と責任は分けて考えたほうが良い。以前犬養道子さんの著書で、荷物を忘れたのは、注意を促すアナウンスがなかったからだと抗議する輩(やから)に喝を入れていらしたのを読んだ。こういう変な権利を主張する人も増えている。
 

 最近のお上の判断は、あまりにも心身衰弱による言動に似ていて情けない。決して健康な魂から発しているとは思えない。これだけ内外に問題を抱えていては、担当者の負担はいかばかりかと同情もしたくなる。それならば、力強い健康な血を投入してはいかがか。

 天災は宿命の国土日本。地震もきて当然。お祈りしても来るものは来る。いざというときの被害が最小限であることを目指した国土計画は政治の信頼回復につながると思う。我々国民は不安なのだ。転ばぬ先の杖(つえ)を考え出せる科学力と技術力を持つ国家である日本。世界に名だたるファンタジーを持ったアニメーションを生み出す国家。アトム世代の自分は子供の頃(ころ)の夢をまだ心のどこかで信じている。

 欲と夢をはき違えた騙(だま)しの幻想の世界ではない本当の未来への夢を、音の世界でも紡いでいきたい。半年間ありがとうございました。(指揮者)

 

「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」
2004年12月22日夕刊 掲載

目次
閉じる