響く 「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」

響くという言葉は、何も音楽の世界だけの言葉ではない。響く言葉は人の心に深く残り、ホールを響かせる音は聴衆の記憶に残るだろう。聞く、聞こえることから一歩踏み込んだ姿勢だと言える。音は空気を振動させ伝わっていく。振動の様子は楽器によってすべて異なり特有の音色になる。楽器固有の音に対して感情的な反応の典型があることが調査されている。

 例えば、ヴァイオリン-優美・軽、ヴィオラ-憂鬱(うつ)、オーボエ-喜劇的、哀憐(れん)、トランペット-力ある、トロンボーン-威風堂々、など各種の表現が心理学者や美学者の立場からまとめられている。作品の演奏に際してはそれがさまざまに変化するであろうが、楽器固有の音色に関する印象というのはある程度統一されるだろう。

 12月1日にティアラこうとう(東京都江東区住吉)で東京トランペットコアという金管楽器のアンサンブルが演奏会を開催する。ここはウィーン・トランペット・コアのスタイルを模して1989年から活動を始めている。このアンサンブルはトランペットやトロンボーンなどの直管の金管楽器の集まりだ。つまりホルンは入らない。またトランペットの種類も全員がロータリートランペットを使用する。その響きは聖歌隊をイメージして作られたこともあり、非常に典雅で崇高な響きがする。

 ヨーロッパでは古くから伝わるスタイルで以前はアンサンブルの数も多かったようだが、現在は約八十年前に結成されたウィーン・トランペット・コアのみ。伝統ある編成に書かれた作品は200曲以上に上るという。ウィーンの響きを愛するこの東京トランペットコアのメンバーが奏でる貴重な作品も興味深い。七月にご紹介した北欧の金管は新しい響き。この中欧の音色は歴史の重みを持った燻(いぶ)し銀といえるだろう。(指揮者)

「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」
2004年11月24日夕刊 掲載

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