アマチュア演奏家たち 「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」

国内の音楽愛好家として楽器を演奏する人の数は膨大だ。関東圏だけでオーケストラなどのアンサンブル団体が、一般団体と学生団体をあわせて四百六十余り、全国津々浦々あわせると一般団体六百七十余り、大学生以上の学生団体百五十、そしてこれまでに少し触れたが小・中・高校の吹奏楽やオーケストラ団体の数も膨大である。ひとつの団体の所属人数は数名から百名近くとさまざまであるが、日本全国楽器をたしなむ人の数を考えると卒倒しそうだ。
 

 社会人になり高価な楽器を手にする人も多い。豊かな日本のひとつの象徴であろう。そしてその活動の内容も昨今また非常に多彩で豊かである。集客を度外視してやりたいことをとことん行えるアマチュアの活動は、ある意味非常にぜいたくな時間をすごしている。

 いくつか問題もある。社会と同様世代別交流が希薄なことである。学校を卒業した若いメンバーが老舗(しにせ)の団体に入らず近い世代で新しい楽団を旗揚げする。毎年新楽団の誕生がある。その場合困るのが練習会場。現在日本にはありがたいことに立派な音楽施設がたくさんある。それでも週末に膨大な数の団体の活動が集中するため、練習場所の獲得合戦が繰り広げられている。幅広い世代が集う楽しみをアマチュア界で復活できないものか。

 海外のアーティストがこの状況を知ると一様に驚く。せっかく休息を取れる週末を熱心に音楽活動にあてるわけである。人によっては数団体の掛け持ちをこなす。メンバーに聞くと「仕事のストレスを週末の音楽活動で解消」ということらしい。一方、ご夫妻で参加のメンバーも多いが、パートナーの理解が得られず苦労している話もよく聞く。仕事にも趣味にも全力投球の日本は、やはり勤勉という言葉がよく似合う。(指揮者)

「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」
2004年10月13日夕刊 掲載

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