シベリウス音楽祭 「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」

8月末からフィンランドに来ている。寒い夏だったそうだ。滞在している中都市ラハティ市では2000年3月にシベリウスホールがオープンしたが、この建設には市民の意見が最後まで賛成派と反対派五分五分で投票では1票差だったそうだ。現在首都ヘルシンキにも音楽ホールの建設が予定されているが、まだ議論が続いている。いつの間にか大きなホールが建ってしまう日本の現状とは大きな違いだ。
  前述のシベリウスホールでは毎年9月にシベリウス音楽祭が開催され今年で5回目となった。貴重な楽譜の演奏もあり研究者やファンには魅力的な音楽祭である。人口500万人余りのフィンランドだが音楽祭の数は多い。その中の多くは自国の作曲家や演奏家、そして自国の音楽を紹介するものだ。

 ここが日本と違う。フィンランドの音楽家と話していて彼らがよく使う言葉に「オリジナルであること」がある。自国の文化と演奏家を自信を持って紹介し披露している姿を彼らに多く見る。オリジナリティーにこだわる演奏スタイルには賛否両論はあろうが、すべてに優等生的な姿勢となりがちな日本にとっては学ぶことも多い。

 表現する手段としての技術の習得は基礎を第一に掲げ幼いころから統一したメソッドのもと丁寧に磨かれている。優秀な音楽家が近年続々と輩出されているこの国の音楽教育のメソッドは世界に注目されている。

 ところで、先週隣国ロシアで起こった悲しい酷(ひど)い出来事は、フィンランドでも連日大きく取り上げられている。週末には窓辺に蝋燭(ろうそく)を灯(とも)して祈りましょう、といったメッセージが携帯電話を使ってヨーロッパの間で駆け巡った。1917年フィンランドはロシアからの独立国となった。個々の民族性を尊重した平和な英知溢(あふ)れる解決法が急務だ。(指揮者)
 

「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」
2004年9月8日夕刊 掲載

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