秋、Syksyの始まりです。台風一過の関東は快晴で気温も高め。
それでも秋の始まりの空気で自然の声も夏の終わりを告げています。
昨日私は行けなかったのですが、サントリーホール音楽財団サマーコンサートの公演は、素晴らしいものになったようですね。
フィンランド出身で現在ヨーロッパで大活躍の才媛スザンナ・マルッキィを初めとした三人の指揮者による「グルッペン」。聞きたかった。
行った方によると稀に見る素晴らしい公演だったとのこと・・・・さすがです!
うう、聞き逃したのは大きいですね。そうそう頻繁には演奏できない作品です。
スザンナさんは彼女のアカデミー卒業試験時代から拝聴していますが、それ以後のキャリアアップはすごいもので、
明確なタクトと意志の強さは特に今回のような現代作品での仕事にぴったりだと私は感じています。
チェロの腕前も確かですが、耳がよく語学センスも素晴らしいようですね。指揮者には必要な要素です。
以前ヘルシンキのオペラで「世界最速の薔薇の騎士」を拝聴したときには座席でひっくりかえってしまいましたが・・・
20世紀以降の音楽を確信を持って紹介していける演奏家が増えていかなくてはと思っています。
演奏されないと音楽作品は残りません。
引き出しに眠っていたのを見つけただけでは、作品の価値は誰にも分からない。
出来たてほやほやのものを、積極的にステージに乗せる機会も増やす必要があると思います。
作曲家の言葉を直接きくことが大切です。
同時代人の生んだものを、同じ時代の人が形にしていくことはやらねばならないこと・・・・だと思います。
今は天国にいる作曲家の作品について、あれやこれや悩む日々とともに、
私自身も特に吹奏楽を通して新しい作品を演奏し続けています。
管弦楽や弦楽合奏においても近年は同時代人の作品演奏が増えてきました。
校訂報告という形で過去の情報を検証していると、
作曲家との直接対話やその人の作品をより多く知ることが如何に大切か痛感します。
「なんでこれをはっきりさせておいてくれなかったの・・・?」 とか
「これは意図的?勘違い?単なる間違え?」
などと詰問したくなる瞬間は多々・・・
まあ、そこへの想像力を働かせる時間も楽しいと言えば楽しいのですが・・・・。
200年、300年前に作った作品が21世紀にこんなに多くの人に聞かれようとは、
当時の作曲家たちは想像していなかったでしょうね・・・・・
自分の作品が小さな器械の中に入って、人々が歩きながらでも聞けるようになっているなんて・・・。
その姿を想像できるようになった20世紀後半からの作曲活動は、
やはり大量消費という言葉に無縁ではいられなくなります。
でもまずは小さな単位でも、どんどん世の中に聞いてもらうチャンスを作ること、
この時代の人の心や耳に、とにかく残していくこと、
それが人類のDNAとなって次の時代への大きな意味で財産になります。
残らない物は残りません。自然に淘汰されます。思わぬ復活劇もあります。
それでよいのだと思います。
もちろん何でも音にするわけではない・・・
演奏家も判断力と洞察力とセンスと様々なもので「今、演奏したいもの、今聞いてもらいたいもの、今音にしなくてはいけないもの」をほとんど動物的勘で選んでいると思います。
その行為の中に、routineは含めたくないなと思っています。残りの人生、そんな時間もないし・・・・。
ということで、今も新しい作品と格闘です。
そうです、来年4月に演奏する、Aarre MerikantoのLemminkäinenです。
シベリウスの同名作品と一緒に採り上げます。
この楽譜、なかなか謎や問題の多い物でして現在それをチェックしています。
このアーッレ・メリカントさんは、シベリウスと同時代人のオスカル・メリカント(1868-1924)の息子です。
お父さんは歌曲が有名です。とてもロマンティックです。
オスカルさんのオペラ「ポホヤの乙女」はフィンランド語で書かれた初めてのオペラです。
その息子アーッレ・メリカント(1893-1958)も「ユハ(1922)」というオペラを書いています。
現在は評価が高いのですが作られた当時はあまりにモダン過ぎると受け止められて不評で上演拒否。
そのため舞台での初演は1963年なのです。なんとラハティの劇場でした。
このレンミンカイネンは作品10で1916年の作曲。シベリウスのSym5のあたりですね。
このオスカルとアーッレの親子二人合わせての生没年はなんとシベリウスのそれとほとんど変わらない・・・
シベリウス(1865-1957)
やはりいかにシベリウスが長命であったか実感します。
メリカントのレンミンカイネンはもちろん題材にしているベースが同じこともありますが、十分にシベリウスの影響が聞こえます。そして当時のヨーロッパの様々な音楽シーンが見えています。
パート譜の最後のページですが、”Martti Similaの指揮による1972年3月14日”の記載がありますね。
シベリウスのレンミンカイネンは最近都響での演奏も名演が知られていますが、少しずつポピュラーになってきたでしょうか。
もちろん「トゥオネラの白鳥」は別格で知られており、「レンミンカイネンの帰郷」も演奏回数は増えています。
それ以外の2曲は4曲セットでの演奏の時しか聞くことができないと思われます。
いささか気の早い話ですが、2010年4月11日、
この二つのレンミンカイネンの演奏会は「聞き逃せない」コンサート」になるよう頑張って参りますので、
ぜひ皆様の手帳に印を・・・・お願いします。
台風一過、暑くなってきた・・・・。
コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして、現在アマチュアオケで先生にお世話になっているものです。
昨日の音楽祭、曲目・指揮者から考えて新田先生のお顔が見えないかと、客席でキョロキョロしてしまいました…(笑)
グルッペンはもちろん、リゲティの作品が素晴らしかったですよ!
>akiさん
コメントありがとうございます!むむ、どなたかな?(笑)
行かれたのですね。羨ましいです。とても行きたかったのですが。
一生聞けないかも知れません(^^;)
また、コメントも宜しくお願いします!