アイノラ交響楽団第6回定期演奏会終了

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昨日3月22日、シベリウスの死生観というコンセプトでくくられた定期演奏会が終了。
コンセプトどおり・・・・暗く、深刻で、かつ深淵なる曲目が並びました。

今年は800名弱のお客様のご来場をいただきました。
強風で、雨模様の「嵐」に似た日となりました。どうも、近年自分の公演が「嵐」になる確率が上がっています。
<(_ _)>
そのようなお天気の中、多くのお客様のご来場本当にありがとうございました。
またアンケートの回収率が非常に高かったのも嬉しいです。ありがとうございました。

本心を申し上げると
これまでの6回の中で最もシビアで「へとへとに」なった演奏会でした。
体力よりも精神的に・・・です。
そしてそれはメンバーはさらにそうであったと思われます。
今回の楽譜は、「一瞬の油断もならぬ」曲ばかり。もちろんいずれの作品も集中力を持って演奏してきた
アイノラ響ですが、今回の楽譜の難易度は想像を上回るものだったと思います。

<イン・メモリアム>で始まった昨日、空気はいきなり「おしまい」というムード。
いや、「おしまい」を「はじまり」とする緊張感。とてもメンバーが気合いが入っているのがひしひしと・・・。
こちらも今までになく「顔が怖かった」と思います。

日本初演となった<森の精>。唯一のびのびと演奏できる箇所が多い曲。
演奏会の中で唯一「明るい音」から開始する曲。(除:アンコール)
リハーサルの途中でも「これは好きだ!これが一番好きだ!」と思うメンバーも多かったようですが・・・・・

その実「体育会系」の曲目であることがわかり、次第に「己の体力への自信の揺らぎ」にも変わり・・・・
そして4つの場面の落差に、心の切り替えの必要も気が付き・・・・
要するに「大変な曲である」ことが途中でわかっていったのです。
最も仕上がりが遅かったのがこの曲。
クッレルヴォに近いタイプですが、クッレルヴォよりも長い曲に感じました。

しかしこの日の演奏はメンバーの根性と気力とセンスと技量と、何より気持ちによって素晴らしい流れと音が得られました。アンケートの中で最も人気が高かったのが「森の精」のようです。
チェロとホルンの二重奏・・・・このソロを演奏しきるのは相当に大変なことです。
リハーサルから二人とも美しい音とセンスで我々を引っ張ってくれました。ブラヴォーであります。

休憩を挟み、<木の精>
この軽妙なしかけたっぷりの愛すべき曲を、私は大好きです。
メンバーもはじめは楽譜のしかけが????状態でしたが、シベリウスの言葉をたくさん知っている皆さん。
すぐに作品の意味がわかってくれました。
それにしてもシベリウスがしかけた八分音符一つのずれは、何の悪戯でしょうねえ・・・・
こちらのソロもおみごとでした。

そして<交響曲第4番>
自分にとって大切な作品、というのは無用な気合いや緊張を伴って演奏してしまうことが多いです。
そこを通り越したところの境地でいつも取り組みたいもの・・・・・
リハーサルを通して、メンバーの皆さんの作品への理解度と集中力が素晴らしいものがあったので、
実はとてもある部分リラックスして、そして良い集中状態で自分はタクトを振りだしました。

そこから40分後・・・・・

この曲の持つ難しさとの戦いの部分
この曲の深遠な魅力への憧憬

その二つの気持ちだけで振り終えました。

十六分音符一つずれた状態で延々と続く楽譜
2+2+4 などというお決まりのフレーズなんてほとんど出てこないシンフォニー
各段強弱がみんな違います!というバランス
ランダムな登場が遠くで見ると自然にきこえなくてはいけないという、
出さねばいけない指示に一貫性がない楽譜。
そんな楽譜なのです。

網目の細かい編み物・・・・・それにより絶妙に描かれる美しい色合い
ひとつほころぶと全く異なるものになる・・・
編み針を一針一針さす如く、メンバーは音符も休符も一つも一つもほころびがないように、
集中力が途切れませんでした。

途中の事故はありました!

しかし

初挑戦のこの交響曲、メンバーの素晴らしい力でここまで演奏できたこと、心より喜びたいと思います。

アンコール1曲目、ラーシュ=エーリクーラーション(スウェーデン)の「姿を変えた神」から前奏曲。
あなたのそばに、神は姿をかえているかもしれない・・・・
そんなメッセージが織り込まれている作品ですが、このアンコール曲まで今回のプログラムのコンセプトとして決まっていました。
死と再生(先月別の作曲家で演奏しましたが)、魂の救済ということをアンコールで成就できるように・・・

アンコール2曲目はシベリウスに戻って、弦楽合奏と本当は語りが入る、「伯爵夫人の肖像画」、
低弦のメロディが美しい曲です。日常のリハーサルの折にも音を出していました。

そして最後は「定番」となった、アンダンテ・フェスティーヴォ。これも練習の折に音を出しています。
やはり「数を重ねること」は、だてではない!
音と音の間までしっかりと自分のものとして自信をもって奏でられるということは、どれだけ音に意味を響かせることとなるか・・・・
毎回のアンダンテ・フェスティーヴォはそれを教えてくれます。

自分がまだまだであることも痛感した演奏会でした。
しかしこの素晴らしい作品たちと時間を過ごせたこと、
アイノラ響がここまで成長してきたこと、
明らかに弦楽器の響きが変わったこと、
このようなプログラムでも、多くの方が足を運んでくださった事、

もろもろのことが心にずっしりと、
そして木の精や森の精たちが自分にとりついているような感覚
そんな感じで、打ち上げでも「ぱ~っと解放!」という気持には遠かった自分・・・・

この世から少し離れて、大変な公演が終わったメンバー達を空から見ていたような
そんな時間を終演後過ごしました。

いつも公演に足を運んでくださる友人知人の皆様からも、暖かなお言葉をいただきました。
本当にありがとうございます!

なかなか現実の世界に気持ちが戻ってこられなかった今回、ブログを書くことも遅れました。
写真は明日アップします。
いろいろな出会いもありました、
それもまた後で・・・・・

お疲れのアイノラ響の皆様、そしてエキストラの皆様、我々を支えてくださった皆様、
本当にありがとうございました

 

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コメント

コメント一覧 (2件)

  •  いつもながらの質の高い演奏に満ち足りた心で帰途につきました。有り難うございました。
     この演奏ができあがる過程を解き明かしていただき、新田先生とアイノラ響のシベリウスが「格別の風格・貫禄」を感じさせる訳が良く理解できました。
     きっとシベリウスへの深い共感度が他の演奏者達と全く異なるのですね!
    この作曲家の作品を演奏する難しさはそこにあるのでしょう。
     第4交響曲の奥深さ、「木の精」の軽妙洒脱さ、「森の精」の楽しさが、それぞれの色合いで描き分けるなど、そう一朝一夕にできることとは思われません。
     シベリウスファンでもちょっと敬遠するような地味なプログラムなのに、多くの聴衆が集まったのは嬉しい驚きでした。新田ファン? アイノラ響ファン? シベリウス狂? 
    それともこの三つの組み合わせ? 一曲ごとの反応を見ても、高品位の音楽を求める方々が多いことが分かりました。
     新田先生とアイノラ響のコンサートが今後も輝き続けることは間違いないでしょう。次回の「四つの伝説曲」がとても楽しみです。

  • >junsinさん
    こちらにもありがとうございます。
    先日の公演には、様々な方面からいらしていただけたようです。
    珍しい作品であっても、静かにじっくり聴いていただけた空気を感じました。
    共感は大切なことだと思います。作曲家が命を削って書き残したものへ、
    何の心も持たずに接することはできません。
    アイノラのメンバーは、大前提としてこの素敵な作品たちを好きであるということがあります。その気持ちをまとめていくこと、大事な務めだと思います。
    来年も頑張ります!ありがとうございました!!

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