成 長 「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」

今の日本は人生の年齢に例えるといったい何歳でどんな人間に成長しているのだろうか考えてみた。この戦後生まれの日本はまだ二十歳そこそこで、幼い頃から優等生で、皆さんに褒められて大きくなってきた。しかし今重い心の病を抱えていて世界がその病状を心配して見守っているのではないかと思う。

  そんな日本で現在、悲しいことに昨年一年間の自殺者が三万四千四百二十七人にも上るという。いろいろな背景を抱えてのことと思うが、あまりにも多い数字に愕然(がくぜん)とする。生きるエネルギーを枯渇させるウイルスが蔓延(まんえん)しているようだ。
 

 生命の継承の問題である少子化にしても、人間突然六十歳になるわけではなく生まれ落ちたときからすべてが始まっている。つまりはるか昔から今の状況は推察できたわけである。自分の将来がどうなるか考えもせず、みんなで目をつぶって楽しい時を過ごしていた子供の日本。自我を持ち自己を知るという個人の成長と同じことを国家も真剣に考えていかないと、個々の細胞である市町村、国民たちは弱っていくばかりだ。国家自体が大人にならないと、文化、経済、政治はお子様ランチのままであろう。最近のお子様ランチは豪華なのでつい大人もだまされることが多いが。弱い部分を自虐的に痛めつけている日本の状況は病んでいるとしか思えない。

 恵まれた生活をしていても、直接的、間接的に世界を壊し始める人間にストップをかけられるのは、文化の力だと思う。権力や財力と結びついた偽物の文化ではない。知力と感性と魂が求める本当の文化である。同じように病を抱えた国が多い現代、地球という生命体の成長の鍵は誰が握っているのだろうか。(指揮者)
 

「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」
2004年8月4日夕刊 掲載

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