品川区民管弦楽団 ’03品川区民秋のコンサート  

コラム

「 Suomi の風景と3つの S ~ SAUNA ・ SISU ・ SIBELIUS 」 シベリウスプログラムに寄せて

1 月、新年を祝うのは 1 日だけ、 2 日目からは通常の仕事が始まる。厳しい寒さの中、朝 7 時頃から仕事場の明かりは灯る。もちろんまだ真っ暗。

2 月、最低気温を更新する月、室内はポカポカの 20 ℃。一歩外にでるとマイナス 20 ℃。防寒具は自分の安全装置。それでもわずかの太陽の恵みを求めて赤ちゃんは外でお昼寝。

3 月、少しずつ日が長くなる。湖の氷も陽射しの当たるところはそろそろ危険信号。「ここは氷が薄いので渡ってはいけません」

4 月、まだ雪も残り気温もマイナス。それでも確実に春がやってきている。鳥の声が木々の間に戻り、復活祭の喜びが聴こえる。生命の誕生を祝う黄色い小鳥のカードが飛び交い、街中には黄色の花が溢れ、市庁舎と教会の間を復活祭の劇を披露しながら人々の輪が移動する。

5 月、突然に緑の絨毯が広がる。そこに白と黄色の小さな花が模様を作る。 5 月 1 日は Vappu という祝日。装いも夏服に代わり、白い学生帽を被ってお祝いする。卒業のシーズン。

6 月、夏の月という名前の通り短い夏の始まり。もう夜はない。深夜 12 時は地平線にほんの少し太陽が隠れる、そしてまたすぐに昇ってくる。夕焼けと朝焼けの交代は限りなく美しい。仕事はそろそろおしまい。

7 月、長い夏期休暇を湖のそばの小屋で過ごす。電気はない。家族や親類が集まって、サウナに入り、湖で泳ぎゆったりと時を過ごす。

8 月、夏期休暇も終わり。それでも時折訪れる夏の戻りに嬉々として郊外へ出かける人々。

9 月、あっという間に短くなる日照時間。冷たい風が心を寂しくさせる。雨が心を刺す。

10 月、もう冬が目の前。月末には初雪を体験。真っ赤な木の実が白い雪の布団で眠っている。

11 月、夜が一日を支配する。雪は少ない、 1 年で一番暗く寂しい月。

12 月、日中 5 時間ほどの太陽の恵みの中でこの街は静かに家族でクリスマスを祝う。イルミネーションが雪に反射して優しい明かりが溢れる。家々の窓には暖かな明かりが並ぶ。クリスマスには街は静まりかえる。クリスマス休暇はご馳走の時期。体の蓄えが一気に増える。大晦日は花火で祝う。

Sauna 、心のオアシス。狭く暗い木の部屋にサウナの蒸気が立ち込める。静かな厳粛な空間。悪いことは汗とともに流しだす。

Sisu 、忍耐、不屈の精神、祖国の誇り、民族の誇り、それを大事にする Suomi の人々。

こんな風景と魂を持った Suomi の大木、祖国の美しい自然を心から愛し、生命の神秘の力を信じ己の歩む道を決して曲げなかった Sibelius 。今の地球が忘れてしまったこと、忘れようとしていることが Sibelius の音の間から聴こえてくる。自然に逆らってはいけない。自然とともに生きてこそ本当の未来はある。

世界中がそんな想いで溢れたら、もっと優しい笑顔がふえるだろう。傷つく人が減るだろう。

                                   

(2003.11.15 掲載) 

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