マエストロ健在!

 井上道義マエストロ。
東京フィルハーモニー交響楽団の第872回定期演奏会を拝聴

マエストロは世間に告知されたように、2014年、重い病と闘っていらした。
これまでも折々公演に伺ったり、シベリウスのことでメールのやりとりがあったりなど交流をいただいてきたが、一番大きいのは自分の1991年東京国際音楽コンクールの時のこと、表彰式の後、あの時の私に対して、何がよくて何が悪かったか、明確に語ってくださったマエストロ。そのことにはずっと感謝している。

一度突然某学生オーケストラの公演にもいらしてくださったことがある。その時も率直な感想をいただいた。
核心をついた、納得のご指摘。

そして闘病生活を終えられ社会復帰されてから、昨年金沢で偶然にお会いする機会があった。
まだ食事が通常どおりではない状態の中、昼食のお寿司をご一緒してくださった。マエストロはいつも直球の会話をなさる。こちらも飾るわけにはいかない。

そしてこの日の公演。
マエストロ直々に公演のあとステージで語っていらした通り、本来は2014年7月に予定されていたプログラム。代役を尾高忠明先生が務められ、その時にプログラムを変えて、井上マエストロの復帰後に今日のプログラムを取っておいた・・・そのような背景がある公演。演奏会の最後にステージから「忠!ありがとう!」と叫んでいらした。お二人は桐朋学園の同門同級生。

ショスタコーヴィチSym7 レニングラードは 自分も2009年にオーケストラ・エレティールで手掛ける機会があった。大がかりな作品だ。そして長大な作品。内容も深い。時間をかけてアマチュアメンバーの総力を挙げたあのステージは忘れがたいものであり、演奏者の皆さんを今でも讃えたい気持ちだ。

井上マエストロはショスタコーヴィチを折々取り上げていらっしゃる。日比谷公会堂でのショスタコーヴィチ全曲演奏会の企画は記憶に残る。日本のマエストロで現在最もこの作曲家の本質が聞こえる方だと私は思っている。この日の演奏も、徹頭徹尾そうだった。以前よりも少しクールな面がみられるタクトだったが、スコアが語りたがっていることを、自在に引き出すタクトを振られていたと感じた。

長い作品だが、そうは感じず聞き終えた。静寂の中の深い語り口を大切にされていたのではと感じた。
レニングラードの作品の背景は本当に暗く重い。その背景の場面を裏側から見ると、今度はフィンランドの歴史にも重なってくる。その部分は作品解説で折々資料を読むので、現在の自分にとってはますますこの作品は重いものと感じられる。

少し以前よりスリムになられたが、音楽の力は強靭になられたと感じた。

前プロのハチャトゥリアンも、まさにハチャトゥリアンだった。今年自分はこの作曲家のピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲を演奏する。その勉強に向けても、非常に多くの学びを頂いた気持ちだった

終演後、珍しくマエストロと撮影。許可をいただいたのでこちらに掲載!まだまだ健在です。これからのステージも楽しみに拝聴します。お帰りなさい、マエストロ。

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