配置・セッティング

今回の特殊な弦楽器配置については、以前お弟子様所有の資料で「ブラームスが気に入っていた配置」として記載されていたのを見てからずっと気になっていたもの。完全にその復元ではない。
オーケストラ、吹奏楽において楽器の配置、セッティングはいつも悩む。一応定番の形は存在しているが、本当にそれがベストであるか・・みな悩んでいる。ホールによって、また作品によって、楽団の特徴によって・・・本当はそれぞれベストのものがあるのだと考える。

オーケストラ・エレティール#64回定期演奏会 撮影:藤本崇



今回のものは、正面にVa,Vcをおいてあとは両翼配置。低音、バスラインがオーケストラの中央に一列に並ぶことになり、
高弦にも管楽器にも聞こえる位置となった。特にブラームスのほうが効果が大きかったと感じている。
以前共演した弦楽アンサンブルで、ブラームスの六重奏を演奏した時に完全なシンメトリーを試みたことがあった。
それも効果を感じていた。

昨年度まで担当していた吹奏楽授業においても、いつも悩みながら取り組んでいた。吹奏楽に関してはいまだに自分の中では解決できていないことが多い。オリジナル作品でも編曲作品でも、作曲者、編曲者により楽器の使い方がとても異なる。
どのような響きを想定しているのか、その響きを実現させるための配置は?人数のバランスは?・・・四半世紀以上かかわっていながら実はずっと思案状態。今も正解はわからず取り組みながら試行錯誤。

室内アンサンブルなどでは、ステージ上に散在するかのように楽器を配置した方が面白い効果がでると感じる作品もある。
実際以前ある5重奏の作品で、そのように位置していただいたこともある。
最近は世界的に見ても配置、セッティングについて様々な形を積極的にとられている。立奏も増えている。
より作品の響きを深く立体的に掘り起こす配置。演奏効果が優先する考え方。コロナ禍で人数制限ができてからも、様々な工夫がなされている。良いことだと思う。
そしてホールをよく知る人の存在・・ホールのステージマネージャーの存在はこの先も大切だと思っている。
そのホールの特性、季節により変化する響きの環境、ひな壇の作り方、人数によるベストの配置、等々本当の意味でそのホールの専門家がいること。その文化はずっと残してほしい。
自分はリハーサルの時に客席に降りて演奏を聴くことも折々行う。休憩時間やリハーサル前の楽員の音出しを客席のあちらこちらで何気なく耳にしながら、ぐるぐると歩き回る。面白いほど客席の位置で音の飛び方は変化する。どの音域が伸びるか、飛んでこないか、どのように反響しているか、数値を見ているわけではなく感覚的なものであるが、そのホールの特性を知らないと演奏するのは怖い。ステージ上の聞こえ方と客席は必ずしも一致しない。ほぼ同じに判断できるホールはとてもありがたいが、多くはない。とにかく毎回演奏環境も生き物なのだ。異なるもの。それが当然。
国内外で活躍されているマエストロたちは、そんなホールの特性も皆さんご存じ。それを想定してリハーサルで作り上げてゆく。
ヨーロッパの古いホールには、その場所を知り尽くした人が必ずいた・・と聞いている。自分の師匠も折々そんなお話をされていた。楽屋番としてずっと座っていらっしゃる方の存在も、初めて出会ったときには驚いた。きっと誰よりも音楽家を、音楽を、そしてホールを知っている人。
合理的に運営経営される世の中になっているが、演奏する場を大切にしてゆく気持ちを持ち続けたい。日本のホールはまだまだ歴史が浅い。残念ながら老朽化で取り壊されてゆく老舗の各地の市民ホールが実は素晴らしい響き・・というところもある。新築万歳ではなく、守り育てること・・・大切にしたい。

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