Gade by Grieg の謎

Youtubeの自分のチャンネルで、また先日の甲府における音楽講座にて演奏したグリーグ作曲の「Gade op.57-2」
実はこの曲に謎があった・・ということを弾いてみてわかり現在調査中なのです。日本グリーグ協会の事務局長ー田邊英利子さんのお力もお借りして、ノルウェー本国の研究者、ピアニストの方々にもご意見伺うなど思いがけない展開を見せている案件です。たった一つの音の違いです。たった一つ、されど大きな違いをもたらす音。

グリーグのピアノ曲は、Edition Peters版とこのHenle版が使用されています。抒情曲集全曲の入った楽譜を所持していなかったので、オーダーしたものがやっと届きました。
Henle版は全曲録音でも知られるピアニストのEinar Steen Nøkleberg氏とErnst Günter Heinemann氏による編纂。
各曲の校訂報告入り。2015年の出版です。自分が演奏していたのはEdition Petersの方。件の箇所がどうなっているか、恐る恐るページをめくると・・・・同じです。Henle版もPetersと同じ音になっていました。

問題の箇所は、上記楽譜の2段目冒頭の小節。右手ト音記号の二拍目裏の音。楽譜どおり読むとfis=ファ♯です。
私自身は当然その音と思い、そう弾いてきました。ある時、この年末に共演するマエストロ、ゲルハルト・オピッツさんも抒情小曲集全曲録音されているので、一度聴いてみようとCDをかけると・・・・
心臓が止まるかと思うほど驚いたのです。「違う!」「え、私が間違えたか?」「Youtube録りなおしか」「間違ってさらっていたか?」様々なことが一気に脳裏を駆け巡り動悸が高鳴り、本当に冷や汗が出ました。
上記の部分の音をマエストロはf=ファの音で弾いています。これはきちんと調べなくては!と、その時点で確認できる楽譜はすべて調査。あまり音源を持っていない自分ですが、2,3人のピアニストの演奏を聴き両方の音が存在することを知り、さらに動機が高鳴り・・・・
日本グリーグ協会の事務局長である、ピアニストの田邊さんにご連絡をとりました。
そこから展開は速かった。まず田邊さんが豊富な資料から更にリサーチを進めてくださいました。

ノルウェー人ピアニストの録音では
Fis音での演奏。
アイナル・ステーン=ノックレベルグ
エヴァ・クナルダール
イブ・グラーセル

F音での演奏
レイフ・オーヴェ・アンスネス
ホーコン・アウストボ

また、ノルウェー人以外では
Fis音
フィアルコフスカ
アペキシェワ

F音
オピッツ
ソコライ
イロ―ナ・プルニ(アソシエイテッド・ボード英国王立音楽ピアノ検定グレード8のCD)

なぜこの違いが生まれているか、の理由が大切です。単なる間違えとしては考えにくく・・・
そのあたりも研究者に問い合わせていただきました。「グリーグ その生涯と音楽」の著者であるアーリング・ダール氏によると、グリーグ全集の資料によるとfis音である。昔のピアニストもfis音で演奏しているようだが、Benestad/Schjederup-Ebbe madeの楽譜を使用していると思われる。というお返事を田邊さんを通していただきました。現代のピアニスト、それも全集版楽譜を使用している人がなぜf音を採用するのか、不明であるということなので、さらに実際演奏録音された皆さんにも問い合わせをしていただいているところです。

先日日本の素晴らしい若手ピアニストお二人にお会いしたので、この楽譜を持っていきご意見伺いました。お二人ともfisであろうが、fの可能性も考えられるということ。また別のピアニストの方からはグリーグらしさ、ということでfを推す意見もありました。このパッセージは曲の中に2度出てきます。一瞬の事なのですがかなり色合いが異なります。さて、これはどちらであるのか・・・引き続きリサーチは続きます。私は現状ではfis音を弾きます。続報またお届けできますように。

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