はじまり 「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」 

 夏は日本では1年の中間。また現在活動の場のフィンランドでは新しいシーズンの前の長い休みの時期、年度末という終わりの季節でもある。そんな時期に二つのことが自分に始まる。

 ひとつはこのコラム、そしてこの2年ほど企画に動いてきたフィンランド人アーチストとの共演、日本人作曲家との共同作業の実現化である。温めてきたものが現実に始まる。      明後日9日に東京・渋谷区富ヶ谷のHAKUJU(白寿)ホールにおいて、フィンランドから世界的なトランペット奏者ヨウコ・ハルヤンネ氏をお迎えしてのコンサートがある。これに続き自分のタクトでの共演を2度持つ。 

 企画の始まりはハルヤンネ氏からの邦人作曲家への委嘱依頼の仲介だった。演奏家と作曲家は相性もある。双方を知る自分としてはよく考えての人選だったと思っている。結果は奏者が作品を非常に喜んでくださり、更に録音企画を進めるべくお互いに動いている。長生淳氏による今回の作品の特徴は作品が育つこと。ひとつの根っこから「ピアノ伴奏編」「ウィンドオーケストラ編」「オーケストラ編」と3種類の作品が育っていく。今回はこの内2種類の紹介。単なる編曲ではない作り方。これは面白い試みになったと思っている。

 指揮者という仕事は「作品」「オーケストラ」「ホール」「聴衆」という出会いの場のコーディネーターでもある。一度として同じ出会いはない。たくさんの始まりに日々接する。始まりがうまく育つこともあるし失敗することもある。今日からこの場所で半年間皆様とお目にかかる機会を頂くこととなったこの始まりを大切にし、音楽に限らずいろいろな世界に目を向けていければと思っている。

「放射線-東京新聞」・「紙つぶて-中日新聞」
2004年7月7日夕刊 掲載

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