日立フィルハーモニー管弦楽団第35回定期演奏会終了

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今回で日立フィルの皆さんとの共演は10回目となった。第8回定期が初共演、共演プログラムも多面的。

今回、ワーグナー トリスタンとイゾルデ、マーラー 交響曲第5番という 作品自体が深くつながる重みのあるプログラム。その作品の偉大さ、内包された世界の大きさ広さにリハーサル期間の数か月、自分がおぼれそうになっていた。

今年の春先は多くの公演の機会をいただき、それが北欧方面に向いていたため、切り替えるのが難しいと感じることもあったのは事実。若いころの脳みその運動神経はもはや同じようには働かない。それは当然だ。作品のとらえ方もまったく違う。作品、仕事への向き合い方を今一度自身に問い直すべし!と強く感じていたのも今年前半のひとつの事実。

日立フィルの公演のとき、このところプログラムノートを執筆してきた。今回も依頼を受けた。しかし・・・
書けなかった。物理的にも困難で担当の方にはご迷惑をおかけした。
しかし、

当日プログラムをいただき、団員の手による思いのこもった名文に接し、自分がお断りしてよかったと正直に思った。聞けば、私がお断りしてほどなく、今回の原稿があがってきたという。
その想いにあふれる演奏を75分やり遂げてくださったのが、

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トランペット1番の大役を果たした、手塚さん。本当に素晴らしかった。
今回の第5番の作品で、手塚さんは若いころ音楽人生が変わったそうだ。その時の想いを存分に奏でてくださったと思う。彼のトランペットによる呼びかけで、この大曲の世界に多くの仲間が集い、それぞれが大きな世界の中でここに語りつくす交響曲。世界のすべてを含み持つ交響曲の世界観をマーラーは語っているが、それを第6番よりも複雑に、多面的に、複層的に語っている作品だと思う。

彼だけではなく、この作品には3楽章に登場するオブリガートソロホルン、この美しいソリスティックな世界を、リハーサルの時から本当に見事に演奏されていたのが、ホルンの女性大内さん。正直リハーサルの時には、私はあっけにとられることもあった。しっかりとした音を持ち、奏でる・・・。そしてホルンの1番奏者も多くのソロを持つ作品。日立フィルはホルン奏者を多く抱えるが、ソロを担当できるメンバーが複数いる。層が厚い。

トロンボーン、チューバのソロも本番にむけどんどん磨きがかかっていた。木管群もじわじわとボリュームアップして、そして雄弁な語りが自信をもってステージできこえていた。

弦楽器も弾いても弾いても続く音符たちと、ある時は格闘、ある時は乱闘、そして最後は和解!
いろいろな音色が聞こえてくるようになった。

打楽器セクションはエキストラの皆さんの協力を得て、やはり多彩な世界にいろいろなアクセントをきかせてくれた。

とにかく情報量の多い交響曲。それをどのように描くか・・・初めてこの作品を指揮する機会を得た自分としては、今回のは最初の一つの答え。たどり着けなかったこともあり、アンサンブルの事故もあったけれど、
一つの世界は今回オーケストラの皆さんとともに見えていたと思っている。そして明日からはまたゼロから再スタート。その繰り返し。

ワーグナーのトリスタンとイゾルデ、前奏曲と愛の死は ワーグナーの中では自分は演奏回数が多い。
と、言うよりワーグナーに距離を置いている自分が この作品の世界には共感していることが理由。
先日演奏した、ジークフリート牧歌も同様。この2曲の世界の違いは大きいが、この両方に共感する。
そして前奏曲という、この作品の導入と、愛の死という作品のおしまいの世界の間の時間を、自分の中に自然に感じながら初めてタクトを持てたかもしれない今回。オーケストラにも大いに感謝している。

日立フィルの皆さんはこの35回の間に、何度か大きな階段をのぼりながらとてもオーケストラとして成長をされていると感じている。その折々に接することができて、とても嬉しい。

今回のリハーサルにも、お弟子様にはずいぶんお世話になった。細かなリハーサルをありがとう。
そして分奏を見てくださった多くの先生方にも深く感謝しています。
アマチュアオケの場合、丁寧な積み重ねが大切。一歩一歩を忘れたら、すぐに階段を滑り落ちる。

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団長、名誉団長はじめお世話になった皆様。レセプションでのひと時。

実はこのあと20分ほどで私は退席。一路大船へ向かった。鎌倉響とのリハーサル。

頭はいきなり「ラテン語系」の作品。三角帽子、魔法使いの弟子、
そしてカレリア組曲。
鎌倉響もこつこつ積み上げる歴史を持ったアマチュアオケ。
11月までその積み上げの時間が続く。

リハーサルを終え、再び横須賀総武線に乗車。錦糸町に戻った。
演奏会用の荷物をメンバーに預かっていただいていた。ニ次会の会場に残っていらした皆さんと1時間ほど歓談。荷物の件、お世話になりました!!!!!!本当にありがとうございます!!<(_ _)>

 

今回写真が少ない・・・・そうです・・・・
なにせ、朝は寝坊した!(自業自得)
公演のあとに別のリハーサルというスケジュール(これも自分の管理責任)
時間的な余裕がまったくなく、逆に向き合うべき作品だけに非常に集中していた。

1300名ほどのお客様ご来場だったそうです。ありがとうございます!
75分間、お客様の気持ちも背中に感じながら・・・
そして最後の音が終わった直後の、絞り出すような「ブラヴォー」の声、
ありがとうございました。メンバーも報われました。

素晴らしい機会をいただいたこと、感謝します。

 

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • お帰りなさい!
    長旅のお疲れがあるはずなのに、エネルギーに満ち溢れた指揮ぶりを拝見してホッとしました。しかし、終演後また別のオーケストラのリハーサルに行かれるとはゲルギエフ並みのハードスケジュールですね。お忙しいのは嬉しいことですが、計画的に休養の日をおつくりにならないと・・・・と心配になります。
     あの複雑怪奇で長大な曲を、一瞬の弛緩もなくオーケストラを牽引され、掌の上で闊達に踊らせる力量の凄さには、「マーラー音痴」の私ですら圧倒されたのですから、一緒に行ったマーラー通の友人が驚嘆するのは当然だと思いました。
     いつもは辛辣で辛口の男が「これは驚いた!」とただ繰り返すだけの感服の態に、私の方も呆気にとられました。
     「マーラー不感症男」をすら揺さぶった素晴らしい音の世界を有り難うございました。

  • 北欧と日本を飛び回っていらっしゃるこの夏…
    スタミナがありますね?!?!
    東京は猛暑がまだまだ続きそうで、流石に家に引きこもりたい気分です
    どうぞ、お身体ご自愛いただき、理想の音楽を追求して下さい
    私も自分なりに地に足が付いた音楽活動を目指して、今後の人生を過ごせれば…と思っています

  • >junsinさん
    お返事遅くなり申し訳ありません。ご来場ありがとうございました。そして身に余るお言葉、じっくりとかみしめております。ご友人の方にも喜んでいただけて、オーケストラの皆さんも数か月の頑張りが報われたかと思います。大曲の重みを終わってからあらためて感じる日々です。また次のステージを目指します。ありがとうございました。暑さの中ご自愛ください。

  • >オケ・ロージンさん
    コメントありがとうございました。本当に厳しい暑さが続きますね。
    フィンランドも後半は暑かったです。日照時間が長いので建物はしっかりあたたまりますね。しかし帰国した時の空気の暑さは・・・比較になりませんでした。お忙しく様々な活動をされているご様子、どうぞお身体大切になさってください。

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