アイノラ交響楽団第10回定期演奏会終了!

 

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多くのお客様、ご来場ありがとうございました。
2004年に第1回目の定期演奏会を開催してから、お陰様で10回目を迎えることができました。
この10年の活動は、シベリウスという作曲家、その作品への愛情と敬意を持ったメンバーとともに、
交響曲をはじめとして多くの作品に取り組んできました。
最初から順風満帆であったわけではなく、多くの苦労をメンバーは体験してきています。
「シベリウス好きな人集まれ」という号令がかけられただけのオーケストラだったそうですから・・・

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その呼びかけ人がアイノラ響設立メンバーのひとり、代表の生出さん。アイノラ響ではオーボエ奏者です。
創立から第1回の定期演奏会までは少し時間がありました。その間に私に打診がありました。
丁度フィンランドから戻った頃、2002年だったでしょうか。

山あり谷あり・・・それでもやりたいことが一緒ということは強いです。結局メンバーは、シベリウスの作品を演奏したいという想いで、いつしか団結します。

年に一回の公演、おそよ半年のリハーサル。
毎回のリハーサルの初めは、必ずアンダンテ・フェスティーヴォ。
度々書きますが、世界一このフェスティーヴォを演奏しているオーケストラでしょうね・・・。
そんなリハーサルを積んだ時間の積み重ね、
第10回の定期演奏会はお陰様でお客様の暖かな拍手をいただき、無事に終了です。

テンペストは、繊細でソリスティックなフレーズも多い手ごわい作品。
小編成で演奏できるので、おすすめなのですが・・・・
ホルン4声クレッシェンドロングトーンに始まり、同じくホルン4声のロングトーンディミニュエンドに終わる。
第2組曲はこの起承転結。
数々の木管のソロ、重要です。アイノラ創設時から関わるメンバーが多い木管チーム。
過ごした時間が長いセクションです。最近は少しずつ新メンバーが加わっています。
この組曲、弦楽アンサンブルによるところも多い。その美しさは格別。難しさも格別。
テンペスト原作に漂う幻想、幻惑のシーンに関わる音楽が多いため、全体に柔らかな靄のかかったトーンです。

そして前半のメインSym.7。交響曲とタピオラのどちらを最後にするか・・・・個人的に試行錯誤がありました。
過去2回この組み合わせをプロ・アマチュアの楽団とそれぞれ演奏しています。
両方試みました。その結果今回は迷わずに、交響詩が最後、と決めました。

交響曲の基音Cに全員が集まるこの7番の終結は言葉にできないほど荘厳。
その世界はGのティンパニ音から始まり、シンプルに引き返さない一本道でたどり着く。
それは音列だけではなく、テンポ設定も。見事に計算され、ゆるやかなスピードアップ、拍子の単位を変えつつもその上昇ラインは変わらず続く。3回目のトロンボーンソロを迎えるAdagioで初めのテンポ設定に戻ることで、3度のソロの意味も見え、最後にTempo Iに戻る前の Largamente moltoが 構造的にも和声的にも究みの位置。そしてTempo Iへの合図は ティンパニが初めに奏でたGドミナントの音、今度は和声を伴い本当の終始へ向かう。すべてのセクションがタイミングは異なりながら、それぞれのCへの終結を目指す。その姿には音符の世界を超えた大きなものを毎回感じる。
 

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こちら右側のやや恰幅の良い方がお弟子様、今回も数は少ないながらアシスタントに入ってもらいました。
実は彼は元トロンボーン奏者。この7番のソロを演奏しています。
その左側、今回のアイノラ響でのトロンボーンソロを務めた伊木さん。お見事でした。素晴らしかった。
北欧音楽に造詣の深い彼ですが、非常によく考えながら演奏するタイプ。その作品とまっすぐ向き合う姿勢から、この曲が求める3度のソロの役割を見事に表現してくれたと感じました。

さて後半、
がらっと雰囲気をかえて、ベルシャザールの饗宴組曲。
まさかシベリウスにこのような音が・・・と、思った方もいらしたのでは・・・
打楽器のアンサンブルから始まり、エキゾチックな音列と響きの行進曲・・・そしてヴィオラとチェロのデュエットソロの静かな哀しい歌、フルートの孤独なソロ、そして生と死の踊りで見せるクラリネットの何とも奇妙な色合いのソロ。演奏していても面白いと思いましたが、どう聞いてくださったか・・・
ソロが多いので、指揮など不要という部分も多かった。

後半2曲目は「語り」入りの作品に初挑戦のアイノラ響。
語りが入るものは、例えば以前演奏した「森の精」これも原曲はそうです。オペラは完成できなかったシベリウスですが、テキストの持つ背景に音で風景を描くということに卓越したセンスと技があったと感じます。
この、孤独なシュプールも弦楽合奏とハープだけの編成の中で、テキストの白い世界と人生の時間を見事にシンプルな音で書き記されています。
この語りは、スウェーデン人のハンス・カールソンさんにお願いしました。

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スウェーデンのダーラナ地方、ルドビーカのお生まれ。今回その土地の方言のスウェーデン語で語ってくださったのです。私自身はあいにくスウェーデン語はまだまだ勉強不足ですが、フィンランド語とは全く異なる語感を聴きながら、柔らかな音楽を運んでゆく時間が非常に心地よかったです。ソリスティックな力を持つ弦トップのメンバーのセンスも光っていたと思います。
ハンスさんの多くのご協力に心よりお礼申し上げます!
日本語堪能で、とても暖かな穏やかなお声をお持ちのハンスさんに Tack!!!

さて、最後は交響詩タピオラ。
この曲の方を最後に持ってきたのは、すべては自然の摂理に帰る。そこが原点であり、すべてはそこに包まれるという作品の哲学が理由です。以前、7番の方を最後にして、タピオラと並
べたとき、交響曲の始まりの世界に自分の状態を戻すことに非常に困難を感じました。今回は休憩も挟んで、そしてほとんど2つの短めの公演を聴いていただくというスタイルでプログラミングしました。シベリウスが作曲した順番でもあります。
こちらが最後の方がよかった・・・・と、自分は思います。

アンケートや早速頂いた感想など拝読すると、このタピオラに対して「難解」という印象を持たれた方もいらしたようです。一方タピオラの世界を見せてくれたというお言葉も頂戴しています。森の神タピオの棲むところ、その人間の手の入らない世界、そのイメージはさまざまであることも感じます。

アイノラ響は「カレヴァラ」の世界に触れる作品をこれまで多く演奏してきました。その伏線があるので、
また多くのメンバーがまだ見ぬフィンランドの深い森へのあこがれがあるので、またまた現在フィンランド在住の元メンバーが発信するSuomi情報から得るものも多いため・・・
とにかくそれぞれにこの楽譜に書かれている、デッサン画のような音符の風景に意味を感じるメンバーがそろっていました。

雷鳴、鳥の声、風の音、木のぶつかる音、人ではない何かの足音、宇宙の響きの呼応・・・・その言葉に
即座に反応を示してくれるメンバーがいたからこそできた演奏だったと思います。

永遠に続きそうな弦楽器の進行パターン、
演奏不能と思われるような高速三連符のクレッシェンド、
いつまで鳴いているのだと思われるような鳥たちの呼び交わす声、
誰かが木をこすっているようなセカンドヴァイオリンのsul tastoの音、
その歩幅がおそらく少なくとも100メートルはあるのではと思われる、得体の知らない足音を奏でるコントラバスとファゴット、
炸裂する金管とティンパニの雷鳴、「木が裂けた!」と思われる短いホルンの音、
ちょうど昨夜フィンランドは劇的なオーロラが全国的に見られたそうですが、そのオーロラや大気の大きな変化がやってきたような金管セクションの和声の呼応、
そして人が直接は目に見ることができない自然の摂理の最後のロ長調のハーモニーが最後にそこに存在している。

この後には、やはり何も演奏できないな・・・というのが正直な感想でした。
ですので今回のアンコールは おなじみのアンダンテ・フェスティーヴォのみとなりました。
このところ、(意識的にではないのですが)次回の演奏予定曲から一部ご紹介のようなアンコールが続いていたのですが、その試みは今回は難しかったです。

アンダンテ・フェスティーヴォも毎回同じようには演奏できません。そのようには指揮をしないようにしています。
アーメン終始を伴うこのコラールの作品は和声構造でおおよその演奏スタイルはできると思うのですが、練習の度に音を出していると、その日の心持や気候で大きく音楽が変化することも感じていて、それを許してくれる作品であろうと考えています。お互いのパートの音を感じ取り、判断しながらアンサンブルしてゆくということを、
この曲で習慣的になってゆけば・・・・そんな想いもあります。
昨年のアンコールの演奏と今年の演奏は大いに違うと思います。

ということで、
多くの皆様の支えをいただき、第10回を終えることをできましたこと、あらためてお礼申し上げます。
 

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このところ交流が復活した、深川第3中学校の同級生の皆さんと同世代の友人の皆さん!
ありがとうございます!!懐かしい仲間の応援はとても嬉しいです!!

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フィンランド大使館からも、一等書記官のユッカ・パヤリネンさん、コミュニケーション担当のハンナ=リーサ・ペルトニエミさん ほか職員の皆さんご来場くださいました。いつもご後援いただき本当にありがとうございます。
演奏も喜んでいただけ、嬉しいです!

第10回の節目ということもあり、この機会にといろいろな方がお越しくださいました。
アイノラ響の活動に興味を持って見守って下さる皆さんも、改めてお礼申し上げます。

今回レセプションを少しオフィシャルな形で開催しました。これまでの記録などもご紹介しながら、
ご来賓の皆様、ご来場のお客様共々語らいの時を過ごすことができました。シベリウスを囲んで、多くの皆さんとの暖かな交流があったこと、嬉しいです。

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社団法人日本フィンランド協会専務理事の早川治子さんに、ご挨拶乾杯のご発声をいただきました。
 

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北欧文化協会事務局の百瀬淳子さんにもご祝辞をいただきました。百瀬さんのご主人様は、実は私の父と大学院の同級生。百瀬先生は国際関係学がご専門、父はロシアということでしたが、そのような本当に寄寓のご縁がありました。

多くの皆様にありがたいお言葉を頂戴しまして、ただただ感謝であります。

アイノラ響から、皆様にお礼の・・・・・・・・・・・・がありました。

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アイノラ響の”会長”こと、コンサートマスター石井さん、ヴァイオリンの新人中島さん、そして打王ことティンパニの山本さん。このトリオで、なんと「カドラの踊り」の再現、そしてSym.1も登場、2番も聞こえましたね。フィンランディアもありました。編曲山本氏のトリオ演奏がありました。ちなみに山本氏のこの時の担当はウクレレです。

宴もたけなわ

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最後までご参加いただいた皆様全員で写真撮影。(不思議な背後霊が見えるのですが・・・笑)

本当にありがとうございました!!!

 

この後は、メンバーによるニ次会。この先はオフレコということで・・・・(笑)

Kiitos paljon !!!!

 

 

 

 

 

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 「こんなシベリウスが聴きたかった!」という願いを、期待を裏切らずいつも叶えてくださる新田先生とアイノラ響のコンビ。今回もまさにその通りとなりました。
       
     定演第10回という記念すべき機会に取り上げられた凝縮された巨星「7番」と「タピオラ」。創立10周年の節目を飾るのにふさわしい名演でした。
    「7番」は筋肉質に引き締まった音とテンポが相まって、凝縮度の高い名演になりましたね。格別シベリウスファンではなく、7番をろくに知らない家内でも「ほんとに上手な演奏!」と思わず素直な感想を漏らすほどでした。
     そして「タピオラ」は、なんと言う巨大なスケールでしょうか! そこにあったのはフィンランドの森ではなく、星々が充満する大宇宙の景観でした。静寂の天空を渦巻く星雲の群れが絢爛と輝きながら次々と現れては消える、新星爆発もある、ブラックホールも迫る壮大な神秘の世界をイメージしてしまいました。そこはまさに「人間の手の入らない世界」です。世間にはつかみどころのない演奏が横行する中で、こんなに説得力のある「タピオラ」を聴いたのは初めてです。
     数年前の某プロオーケストラとの「7番」・「タピオラ」よりも、感動の大きさは格段に上でした。新田先生とアイノラ響の息のあった、互いに信頼感に溢れる間柄のなせる業に違いありません。
     そう言えば先生の指揮ぶりも、第2,3回定演の頃のように噛んで含めるような懇切丁寧な棒ではなく、オーケストラの自発性に委ねる振り方に変わって居られるように感じました。オーケストラの成長を物語っています。
     終演後のパーティで、アイノラ響のメンバーの何人かの皆様に賛辞と感謝を直接お伝えすることができたのは、何よりでした。60年以上もシベリウスの音楽に心酔してきた人間を、そしてピント外れのシベリウス演奏に常日頃落胆ばかりしている擦れっからしのシベリウス狂を、心から感動させてくださる演奏をされる新田先生とこのメンバーの皆様に深い敬意と羨望を覚えます。何と贅沢な世界に住んで居られることか! なんと幸せな皆様でしょうか!
     大使館の方が言われたように、この世界に一つしかないシベリウス専門オーケストラと新田先生をフィンランドに送り、その驚くべき名演をヘルシンキやラハティから世界中に発信できる日が新しい夢として広がります。
     第11回目以降も、また新鮮な取り組みを目指して第一歩を踏み出されるものと思いますが、オスモ・ヴァンスカ氏とラハティ響の関係のような素晴らしいコンビが産み出す名演の森が楽しみです。
     次回は「大洋の女神」が聴けますが、まだ「ルオンノタール」「吟遊詩人」、
    「白鳥姫」組曲op.54、「クオレマ」op.62a,b、鶴のいる風景op.44-2、そして意外なことに「カレリア」組曲op.11などの未聽の曲を取り上げていただきたいと思います。

  • >junsinさん
    コメントありがとうございます。ご来場、レセプションへのご参加本当にありがとうございました。長くこのアイノラ響の活動を見守っていただき、心より感謝申し上げます。
    多くの応援を背に、なんとかここまでたどり着きました。レセプションでもお話しましたが、課題はまだまだ残っています。それでも積み上げる時間の中で、シベリウスへの理解と共感もメンバーそれぞれ深まってきているのではと感じています。
    どちらかというと、おっとりと、静かな集団です。大きな活動に向かうエネルギーは、相当の覚悟を振り絞らないと動かない・・・そんな性格もあるかもしれません。でも何かの機会を得られるよう、これからもしっかり向き合ってゆきたいと思います。
    身に余るお言葉の数々、本当にありがとうございます。
    またお楽しみいただけるよう、精進します。

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