エレティールを拝聴

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オーケストラ・エレティールの第46回定期演奏会を拝聴。指揮者お弟子様。
今年の2月は私が担当、その時もアシストをしてくれたが、この14年ほど 初めは練習見学、そしてアシスタントの長い時間を経て、エレティールの定期演奏会デビューとなった。おめでとう。

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会場は、ティアラ江東大ホール。エレティールが度々利用するホールだ。
このように体格の良いお弟子様。この身体の大きさを生かしたプログラムであり演奏であった。

この楽団には、ほかの楽団にも所属しているメンバーも多く、お弟子様自身他団体で数多く共演しているメンバーが、金管楽器を中心に複数いる。またこの14年の時間の中で、かなりのメンバーとは昔からの顔なじみ。しかし、やはり本番の公演を持つというのは、まったく違う仕事になる。
当人の気持ちもアシストの時に向き合うときとはおそらく大いに違ったであろう。

プログラムは指揮者のお得意の分野。そして振りたい!と強く思ったものが並んだという。

ドヴォジャーク 劇的序曲「フス教徒」
これは、まずもって演奏会で聴く機会は非常に少ない。しかしこの作品と当日のメインとなる交響曲第7番は深く音楽的につながっている。プログラム構成としても非常に適切で興味深く、かつ演奏効果もあったと思う。

この日はステリハから立ち会い、通常の仕事の逆のことを行った。
つまり、バランスチェックやらなにやら・・・

自分は弟子やアシスタントはその人が仕事をしているところを見ないと、本当のアドバイスはできないと考えている。レッスンだけでは見えない部分、わからないことは多い。指揮法のレッスンは、ちなみにお弟子様にはほとんどしていない。スコアを挟んだ討議がほとんど。あとは質問に答えること。指揮法は当人が現場で実際に悩んで、実際に問題意識を持った時に何か言えることがあれば・・・と思っている。だから仕事の現場に時々行く。
脱線するが、シベリウスアカデミーのレッスンも見学した当時はそのようなものだった。
オーケストラやアンサンブル相手に学生たちが指揮をして、リハーサルをしてゆく。ひたすら自分の思うように時間を使い、それを録画し、またその現場を教授が見ている。
その時に教授が口をはさむこともあるが、リハーサルの時間の後に質疑応答になっていた。
指揮法は当人が「やっているつもり」という部分が多い。(自分を含めて)
「そんなつもりないのだけれど・・」、
でも、客観的に見ると原因は指揮者にあるということは多々ある。
(昔の師匠には原因の9割は指揮者と言われてきた)
楽団の方がその点は厳しい視線で見ている。

アカデミーでは教授の指摘「指揮者のここが悪いから、こうなった」という発言に対して、
かなりの割合で若手指揮者たちから反論が出ていた。
「自分は悪くない!」

この強さはある意味必要か・・・・

さて
リハーサルでバランスが改善し、サウンドが落ち着いてきて、さらにお客様が入り本番はリハーサルよりも、
かなり細部が聞こえるようになっていた。

「フス教徒」の作品に度々現れるテーマが次第に強靭となり、Tuttiで駆け抜ける最後まで、本番は非常に良い流れとエネルギーのキープが見えていた。指揮者が「やりたい」と思い取り上げた作品。想いも強かったのだろう。オーケストラも未知の作品ながら、よく表現していたと思った。

つづくスヴィリドフの「吹雪」。これはとても美しい映画音楽を基として改編された組曲。
素朴なロシアの旋律が全編を覆う。そして多くのソリストたちが抒情的に奏でる。見事だった。
エレティールの強みのひとつに、金管セクションの美しさと力強さがある。自分もショスタコーヴィチの演奏の時に、そのセクションの底力を度々感じている。
トランペットのソロをはじめとして、木管、ヴァイオリン、ともども美しく聞かせてくれた。
この曲も指揮者の念願かなって取り上げられた作品。

休憩時間に夏にご自宅にお邪魔したワグナー協会のご夫妻とお会いした。エレティールのメンバーに会社の同僚がいらっしゃるという。前回の自分の演奏会にもいらしてくださった。

さて後半、
ドヴォジャークの交響曲第7番は「演奏したい」でも「難しい」の筆頭の作品だと思っている。
学生オーケストラも度々候補に挙げる。しかし・・・手掛けると「!!!!」というほど難しさが襲い掛かる。
自分も演奏回数は多い。また後期の3作品の中でも一番好きな作品だ。しかし・・・簡単ではない。

細部のアンサンブルの事故や、音型が並びきらないなど・・・細かく見ると指揮者に後で多くのダメだしをしたくなるポイントはあった。しかしもっとも大切なこと。この作品がどのような作品なのか。ドヴォジャークがどんな響きを求め、どんな音楽を描いたのか・・・・そのことは非常に明確に描かれていたと思う。
骨太で肉厚な音と音楽。
これは悪口ではなく・・・・・指揮者の体格と呼吸によるものも大きい。もちろんただ体格が良くてもイメージが身体の中になければ出ない話だが・・・。

世の中にはどんなに細部をコントロールして美しく音を並べても、何も語らない、何も聞こえてこない演奏もある。それはもっとも残念なパターン。(と、自分は思う。自戒もこめて)

お弟子様は子供のころからヴァーツラフ・ノイマン氏に傾倒していたそうだ。トロンボーン出身のためその師匠が所属する楽団のリハーサルなども見学をし、ノイマン氏とも会えたそうだ。来日公演、録音などでも度々チェコの響きを体験し、そして最近は毎年チェコに行っているようだ。そういう積み重ねは、知らず知らず当人の細胞の中にしみついてくる。
音楽は空気、大気を振動させる。音は並べるのではなく、響きを生むことが音になる。
どんな空気、どんな振動、どんな音色、どんな温度・・・そのあたりは必ず音楽に必要な要素となる。
それを知っているかどうか・・・は、結局のところ大切な表現の要素になる。

荒削りだったかもしれないが、大事な音楽の部
分を聞かせてくれた演奏だったと思う。
私は20年以上の付き合いがあるエレティールだが、オーケストラの皆さんに、大いに感謝申し上げたい。
あの大変な作品の数々を本当に熱心に取り組んでくださったこと、正面から向き合ってくださったこと。
ありがとうございました。
そしてお弟子様、定期デビューおめでとう!

もう少しスリムになってほしいと思うのは私だけではないと思うので、その点 ちょっと厳しく指導しておきます。

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今回のコンサートミストレス、そして学生時代ほぼ同期の仲間たちと。調布の居酒屋の時間を思い出すショットですね。当時私のアシストを始めたころで、どういうわけかこのころの学生だった皆さんは私のことを

「こわい」

と誤解なさっているようです

こんなに
「やさしい」

のに・・・・・

さて次のエレティール定期演奏会は第47回。日程は2013年2月10日(日)です。
指揮者は再び私です。
なにやら身も凍るようなステージになりそうな予感です。
お楽しみに・・・・・・

激やせしそうです。(^^ゞ

 

 

 

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コメント

コメント一覧 (2件)

  •  ユリ先生、お忙しいなか、ご来場いただき、演奏のアドバイスをいただき、ありがとうございました。
     我々も長年お世話になっている佐伯先生と演奏ができ、嬉しかったです。
     方向性を持ったプログラムは、我々も大変勉強になります。
     次回もよろしくお願いします。団員一同、頑張っていきたいと思います。
    「1」ですね。

  • とうやんさん
    コメントありがとうございます。お邪魔しました。
    客観的に聞いているとこちらが緊張してしまいますが・・・
    魅力的なプログラムでしたね。そしてエレティールならではの響きも楽しみました。お疲れ様でした。次回、よろしくお願いします!1・1・1です。

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