弾く7

Beethoven piano sonata no. 12
Beethoven sonata op.26 No.12 III

ベートーヴェンのピアノソナタ32曲全部弾いてみようプロジェクト再開。中断の理由は楽譜事情による。
お恥ずかしいことに欠番があった。子供のころのレッスンでは日本の出版社の楽譜を使用。32曲を3巻に分冊。音大入学以降勉強した後期ソナタはヘンレ版を使用。ヘンレ版は2巻に分冊。よって第12番から15番まで手元になかった。このプロジェクトを始めてからヘンレ版第1巻を購入。ようやく届いた。
第12番は初見。4楽章形式。1801年に完成。この時期の創作の多さに改めて驚く。第3楽章に「葬送行進曲」があることで知られている。後世の作曲家も影響を受けている。弾きながらマーラーを感じた。もちろんショパンも。この第1楽章は変奏曲。テーマが非常に崇高。美しい。As-Durという調性の色彩もあるが、簡潔で抒情的。変奏曲のスタイルはベートーヴェンのほかの作品で勉強したことがあるが、モーツァルトの変奏に比較すると武骨で直球という印象を持っている。このソナタの変奏もその性格を感じながらも、より深い展開を感じた。今回は概要をみただけのものだったが、この曲は更に弾き込んでみたい。

Beethoven piano sonata op.27-1 No.13

さて、第13番も初見。フラット系の調性が続く。どちらかと言えば自分はフラット系が好きだ。1800年から1801年にかけて作曲が進められた。次の第14番(通称、月光ソナタ)とセットで、「幻想曲風」と名付けられている。研究者によるとその意図は、「即興の手法で」ということ。確かに第13番は切れ目なしに全楽章が弾かれる。厳格なソナタ形式が存在しない。第二楽章のスケルツォは、自分は交響曲第5番の第3楽章を背景に感じる。

Beethoven piano sonata op.27-2 No.14

そして第14番、通称「月光ソナタ」その命名はベートーヴェンの死後、詩人レルシュタープの言葉による。第1楽章の雰囲気を、月明かりに照らされたフィーアヴァルトシュテッテ湖での小舟に乗った経験になぞらえたようだ(ルイス・ロックウッド著ベートーヴェンによる)
あまりに知られた名曲。13番と同様幻想曲風にという作曲者の意図。cis-moll 。3つの楽章の性格は見事に明確に分かれていて、冒頭の限りなく繊細な世界から、終楽章の激情的なところまで一貫したドラマが見える。実際、ドラマでこの曲が使用される例は多いのではないか・・・13番とともに1802年に出版されている。
この曲は、以前に練習はしている。が。その時の楽譜が見当たらない。ソナタ集ではなく、単独のピース楽譜で勉強した記憶がある。手は覚えていた。レッスンは受けていないと思う。何ともお粗末な勉強の仕方である。

そろそろ秋から冬のベートーヴェン交響曲&ピアノ協奏曲のスコア勉強を本格的にと思う。
残念ながら、12月に予定されていた「熊本第九」は中止になったと連絡が入った。よって今年は愛知室内オーケストラとの、第6番、第5番、第7番の交響曲と、ピアノ協奏曲全曲の指揮のみとなったベートーヴェンへの取り組み。どの作品もそうだが、終わりのない勉強という喜ばしい蟻地獄の世界を見ている気がする。進めるほどに這い上がれない。この状態ではステージに立てないので、咀嚼して自分の細胞に溶かし込む。リサーチ、分析という作業は必須で大切だが、その先の作業が演奏家には必要。

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