このソナタの作曲は、交響曲第2番と第3番に挟まれた1804年の事。そして21番のワルトシュタインと、23番の熱情ソナタに挟まれた2楽章構成のソナタらしからぬソナタ。小さきものながら、美しいというのが今回初めて向き合った感想。二つの楽章ともにF-Dur のちの「田園」また交響曲第8番の調。転調も多く、なにやらベートーヴェンが何かを探している、試みているような感触も得た。拍子も調性もテンポも異なるが、次なる23番の初めの動機の反進行から始まっているのも、並べてみるとユニーク。小さな実験工房という作品に感じる。
通称appassionata.熱情ソナタにたどり着いた。1番から順に弾いてみて、これまでに勉強してきたもの、初めての曲いずれも同じようにゆっくりと紐解きながら弾いている。春からはじめて秋に漸くここにたどり着いた。著名なソナタながら実は学習期に手掛けていない。きちんとレッスンを受けていない曲。でも学生時代に勝手に弾いていた。そして今回あらためて向き合い、自分の思い込みで譜読みを間違えていた箇所を多く発見。恥ずかしい次第・・・・
へ短調の大変にエネルギーの高いソナタは1804年からスケッチが始まり、完成は1806年。交響曲は第4番が同じ年に完成している。そして第5番のスケッチも見られる。また「フィデリオ」の完成の後。よく指摘されるこのソナタに出てくる「運命の動機」は、リズム形式は確かにSym.5の動機と同じ。第1楽章は静寂の時間が比較的長い。そのことを若い頃あまり心に留めていなかった。強弱変化を正確に弾いてみると、この世界の隣にありそうな世界が見えてくる。
この緩徐楽章の変ニ長調の世界は、両端楽章の嵐の中でひと時の安らぎ。あるいはそれ以上の深い喜び。変奏曲形式をとっているが、ずっとここにとどまっていたいという響きの世界を持っている。
そして終楽章。再びヘ短調。動き回るパッセージの中も単純ではない!ということを今回再確認。やはり若い頃随分音型を間違えて弾いていた。恥ずかしい次第。一か所疑問の残る音を見つけたが、調査を進めてみる。
ピアノソナタを研究した学者の言葉では、この21番ワルトシュタインと23番(通称)熱情において、ピアノソナタ形式の大きな変革がなされたとある。
この先32番までは、かなりの大きな山となる。じっくり取り組みたい。
ピアノソナタや弦楽四重奏の中で様々な試みが行われ、交響曲に反映しているということを今回は一つのポイントとして、
年末までの演奏につなげてゆきたい。
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