2000年から縁あってフィンランドと行き来をしている。この国の静けさは有名だ。自室の物音がすべて隣人に聞こえてしまうのでは、という恐れ。自分の鼓動が日常これほど聞こえる驚き。春初めに、解けかかった雪を載せた木々から小鳥の声が聞こえる喜び。外界の現象が耳に心地よく飛び込んでくることを一年を通して味わっていた。そして01年10月の帰国を迎えた。
成田空港に降り立ち都内へ戻ってきて、足がすくんだ。あまりの騒音に情報が処理しきれない。疲労感が押し寄せてきた。人ごみに出かける気力もなくなっていた。テレビの音も苦痛である。はじめの帰国から四カ月後再びフィンランドに2カ月間滞在した。雪の季節ということもあり、より深い静寂であった。内面が元気になるのを感じた。このような生活を繰り返しているうちに、騒音の恐ろしさをより深く考えるようになった。 |