<森と湖の詩>

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「マナー」

 日本は社会性に乏しい。島国であるために、他国や他民族と折衝が少なかった国であるためにそれは仕方がないかもしれない。しかしこうして世界が狭くなった現代では、それでは済まされなくなっている。

  コンサート会場でのマナーもいろいろなところで語られるようになってきた。この夏休みには「親子コンサート」と銘打って幅広い年齢層の聴衆を迎えてのコンサートも多くなる。おそらくこのコンサートマナー問題も過熱するであろう。

 コンサート会場というのは特殊な空間だ。クラシックのコンサートの場合、会場によって数十人から三千人ほどの聴衆が集まる。その聴衆が同じ空間で演奏に聴き入る。ポップスのコンサートと違い、通常は、PA(拡声装置)など音の増幅機材を使わない。非常に小さな音を楽しむこともある。隣席の人の振る舞いが気になることだろう。

 苦情には「パンフレットをめくる音が煩わしい」「鼾(いびき)がきこえた」「子供が騒ぐ」「演奏中に話をしている」等々きりがない。

 何をしてはいけない、というよりもコンサート会場で演奏を楽しむことの意味をもう一度確認すれば平和な解決がみられると思う。自分の行動も他人への騒音の原因になっているという自覚。そして集っている全員でコンサートを成立させるという共同体としての意識。自分だけの空間ではないのだ、という認識。それらがそろえば快適な空間になると思う。社会にただ属するだけではなく、一緒に作っているという自覚が良いマナーを生む。

 時々周囲の人に自分の楽しみを邪魔されたということで、終演後声を荒らげて抗議をしている光景を見かける。これは行き過ぎた行為だと、私は思うのである。(指揮者)

「放射線−東京新聞」・「紙つぶて−中日新聞」
2004年8月11日夕刊 掲載

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